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フルメタル・アクションヒーローズ
第5話 からっぽの少年
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レに残された、たった一つの……」

 その想いを、記憶を辿るように語る幸人。そんな彼がふと、話に聞き入る恵の顔を見た瞬間。我に返ったように咳払いし、再び背を向けてしまった。
 いつものような余裕がなく、どこか子供っぽい彼の様子に、恵は微笑ましげな表情になる。

「……失礼しました。多分に私情を挟んだ話をしてしまったようです」
「いいよ。その私情を聞きたくて、ここまで来たんだからさ」

 全ての枷が外れたような思いに、恵は頬を緩ませる。少なくとも真里は、本当に大切に思われていたことは間違いない。あの瞬間、彼女は純粋な想いから守られていた。
 それが、恵にはただただ嬉しかった。才羽幸人は、「救済の遮炎龍」は。悪人なんかではないのだと。

「散々隠してきたことは、謝罪せねばなりません。来週には任期満了となる身ですが……本来なら、それまで『救済の遮炎龍』としての個人情報は公表できない規約ですから」
「心配すんな。お前の任期が終わった先も、アタシはベラベラ喋らねぇ。口の硬さには、自信がある」
「ご厚意に、感謝致します」
「感謝しなきゃならないのは、アタシの方さ。……よかったよ。ちゃんと、話聞けて。それで、才羽はこれからどうすんだよ? この先もずっと、任期を終えても真里には何も話さないままなのか?」
「そのつもりです。私が鳶口纏衛の息子と知れば、今までのような気安い話もできなくなるでしょう。知らないほうがいいこともあります」
「……そっか」
「尤も、それは私個人の感覚に基づく判断でしかありません。私より遥かに彼女を理解しておられるであろうあなたが、話すべきであると断じるのであれば……」
「……そうかもね。でも、それは当分先に延ばした方がいいと思う。女学院に馴染む前にそんなこと知ったら、さすがにショックで学校辞めちまうかも知れねぇからな」

 恵は親友の、繊細で優しい心をよく知っている。昨日の件で恐ろしい目に遭っても、「ちゃんとやった人と話し合えれば、解決できるかも知れない」と彼女は言っていた。親友でなければ気づけない程度に、肩を震わせながら。
 そんな彼女が、自分が好意を寄せる相手が「自分が人生を壊してしまった少年」であることや「何もかも知っていた上で隠されていた」こと、「親子共々、自分の危難に巻き込んでしまった」ことまで知れば、さすがに心を折られてしまう。
 そんな悪手を、この男に打たせてはならない。僅かな時間でそこまで逡巡した恵は、自分達だけで秘密を共有することに決めるのだった。

 その旨を、言葉にして伝えた時。

「わかりました。……やはり、あなたに話してよかった」

「……!」

 幸人は、ふっと口元を緩め。穏やかな笑みで、そう口にした。

 刹那。

 恵は、頭を鈍器で……それもフルスイング
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