第4話 本当の名前
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事な用事がある」と言い残して早々に教室を飛び出し、早退の準備をしていた幸人と合流する。
すでに周りの話題は昨日の一件で持ちきりであり、この近くに「救済の遮炎龍」が住んでいる、という噂も立つようになっていた。
「この分じゃ、あんたに当たりをつけられるのも時間の問題だな。……にしても、あの植木鉢落としたクソ野郎はどいつだぁ? ぜってぇ探し出してブチのめしてやる」
「玄蕃様。この女学院に、校舎内に立ち入れる男子用務員はおりません。教員も全て女性です。クソ野郎という形容詞は不適切であるかと」
「言葉の綾だ馬鹿野郎、いちいち訂正すんな!」
相変わらずの仏頂面と口調に、恵は苛立ちを募らせつつも隣を歩く。作業着のまま校門を出る彼と、絢爛な制服に身を包む恵の組み合わせは酷く不釣り合いだ。
「……あー、後で真里への言い訳考えとかなくちゃなぁ。コイツと一緒に下校したせいで、変な噂が立ちそうだ」
「確かに、一介の用務員と生徒様が必要以上に親しげにしていては、怪しまれるかも知れませんね」
「アタシが気にしてんのはそこじゃねー。……ったく、よくこんな鈍い奴に惚れたもんだ」
親友の男の趣味は、よくわからない。恵はそんな心境を渋い表情で顕しつつ、幸人の後を追う。
(……にしても、あの「救済の遮炎龍」がうちの女学院で用務員やってたなんて、な。あの会長が知ったら卒倒もんだ)
やがて二人は、女学院からやや離れた住宅街の一軒家に辿り着いた。そこで足を止めた幸人の横顔を見遣り、恵はここに「救済の遮炎龍」の秘密があるのだと確信する。
(さぁ、才羽。あんたがどういう奴なのか、今日こそ白黒付けてやろうじゃんか)
自分のことを何一つ明かさない、胡散臭さの塊。その靄を切り払い、本当に真里を守ってくれたヒーローだということを自分に証明するべく。
車庫のシャッターを開ける幸人の後を追い、恵はその敷地に一歩ずつ踏み出して行った。
「これって……」
そんな彼女の視界に飛び込んできたのは――スポーツカーを思わせる形状の、赤塗りの車体。その背部には、放水ポンプや梯子が折り畳まれて積載されていた。
バンパーの部分には、「SCARLET RANGER」と刻まれている。恐らく、この消防車の名前だ。
まさか、いきなり小型の消防車と対面することになるとは思わず、恵は暫し呆然とその車体を見つめていた。
そんな彼女をよそに、幸人は作業着の上着を脱いでTシャツ一枚になると、その胸に取り付けていた真紅の袈裟ベルトを外し、車庫の端に置かれたテーブルに乗せる。ゴトリ、という重量感に溢れた音が、その重みを物語っていた。
その時。
「おや、お帰り幸人。思いの外、早かったね」
白衣を纏う中年の男性が、別室と繋がる扉か
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