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フルメタル・アクションヒーローズ
第3話 用務員・才羽幸人
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 それから一ヶ月。ゴールデンウイークが終わり、季節が夏に向かい動き始める頃。

 聖フロリアヌス女学院の高度な授業にも難無く適応し、そればかりか勉学に苦心するクラスメートを積極的に助けて行く真里の人望は、入学当初より高いものとなっていた。
 現在では勉強を教わりたいと他クラスから訪問者が来るほどの人気者となり、当初は彼女を妬んでいた一部の生徒達も、徐々に彼女を認める傾向を見せている。

(恋の一つでも、か……)

 ある一人の、二年生を除いて。

(……あ。才羽(さいば)君、花壇の水やりしてくれてる。後でお礼言いに行こっと……)

 そんな先輩がいるとは、露も知らない真里は。休み時間中、ふと窓際から校庭を見下ろし、白マフラーの用務員の姿を見つけていた。
 相変わらずの仏頂面だが……その顔つきには似合わないほどに、丁寧に草花を扱う彼の様子を、真里は華やかな笑顔で見守っていた。

(あ、くしゃみしてる……かわいい)
「まーた才羽のこと見てんなお前」
「ふひゃあ!?」

 その時。不意に至近距離から、前の席の恵に声をかけられ、真里は仰天するあまり可笑しな声を上げてしまう。その珍妙な悲鳴に注目する周囲に、彼女はひどく赤面した。

「……も、もう。なによ恵、いきなり」
「そっちこそなんだよ。入学式の日からずっと、暇さえあれば才羽のヤツのこと見てんじゃんお前。確かに用務員にしちゃあ珍しいイケメンだが、お前が惚れるほどのモンか?」
「ほ、惚れっ……そんなんじゃないってば!」
「そうかい。んじゃ、なんなんだ?」
「そ、それは……」

 恵が言う通り、真里は入学式の日に出会って以来ずっと、ふとした時にあの仏頂面の用務員を見つめるようになっていた。

 用務員の名は、才羽幸人(さいばゆきと)
 十六歳……つまり真里達と同い年であり、昼は女学院で働き、夜に定時制学校に通っているという。

 普段から無表情の仏頂面で、同い年の真里や恵に対しても敬語を崩さない。しかし女学院を彩る花々への手入れは丹精が込められた仕事ぶりであり、花を好む真里には非常に好印象だった。

『ねぇ、才羽君。トゥルシーの栽培とか出来ないかな?』
『トゥルシー……医学的効能のあるハーブの一種ですね。基本的に日本の土壌では一年草ですが、近年ではこちらの土壌に合わせた品種も開発されているとか。生徒の希望として、上に掛けあってみましょう』
『やったぁ、ありがとう!』
『いえ、これも仕事ですから』

 そんな彼女は時間を見つけては彼に話し掛け、花の話題を咲かせており、彼の方も無表情ながら、真里の話にはいつも付き合っている。女学院の学生と男の用務員、という圧倒的な身分差がなければ、その様子は恋人同士のようにも窺えた。

 実際。真里が、い
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