第3話 用務員・才羽幸人
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見えない。
日本武道の頂点に長らく君臨している父親ですら構えさせるほどの自分の気迫を浴びておいて、ここまで無反応を貫かれた経験は、恵も「初めて」だった。
(なんっ、だよコイツ涼しい顔しやがって! 腹立つ〜っ!)
まるで真里への煽りが自分に跳ね返ってきたようだった。その羞恥心から来る怒りが、恵の頬を赤く染める。
一方、幸人は何もしない内から怒り出した恵の様子に小首をかしげるのだった。
「……玄蕃様。もしやお身体の具合が悪いのでは」
「う、うるせぇ許可なく立つな! ……だいたい! お前のその『何言われてもどこ吹く風』って感じの態度が気に入らねぇんだ! 真里は辛いことがあったって前を向いて笑ってんのに、お前ときたら何もかもどうでもよさそーな顔しやがって!」
「返す言葉もありません」
「いや返せよそこは! アタシの気迫を浴びて平気なくらいの大物のクセして、なんでそんなに卑屈……」
幸人の心配を他所に、さらにいきり立つ恵。そんな彼女がさらに声を荒げた瞬間。
何かに気づいたように、彼女は説教を中断した。
そのまま振り返った先には、純白のテニスウェア姿の真里がいた。遠巻きに見つめているだけでも魅了されてしまいそうな、可憐な佇まいの彼女は、同じ部活の仲間達に笑顔で手を振りながら駆け寄っている。
真里の姿を遠目に見たことで、バツの悪さを感じたのだろう。恵は気まずそうに視線を逸らし、舌打ちする。
「……佐々波様、部活にも入られたのですね」
「医者やるにも体力は必要だから、ってな。聞いた話じゃ、一年なのにもうレギュラーの座は固いそうだ。何やらせても天才だなあいつ」
「ええ、全くその通りです」
「……お前、只者じゃねぇくせに嫌に卑屈だな。そういう実力以上に自分を下に見る奴には、安心して親友は任せねぇぞ」
「あなた方に比べれば私は凡人です」
「だからそういうところがアタシは気に食わなッ……!?」
またしても。彼女は、最後まで言い終えることが出来なかった。
幸人の肩越しに、信じ難い光景が現れたのだ。
屋上から、何かが落ちている。
あれは、植木鉢だ。
落ちる先は、
真里の、頭上。
「……真里ぃぃぃいいぃいっ!」
そこまで思考が追い付いた瞬間、恵は弾かれたように走り出していた。その叫びから僅かな間を置いて、周囲に悲鳴が広がる。
「えっ!?」
誰もが自分に注目し、叫んでいる。突然起きたその出来事に、真里は事態を飲み込めず、何が何だかわからないまま、ふと頭上を見上げた。
そして、理由に気づいた。
気づいたが、もはや目と鼻の先。
かわすことも防ぐことも、間に合わない。
「くそォォォッ!」
なんで、こんなことに。一体
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