第3話 用務員・才羽幸人
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つも花を大切に扱う彼に好意を持っていることは明らかだった。だが、幸人の方はまるでそんな兆候を見せない。
恵としては互いが好き合っているなら、身分差なんて気にせず付き合えばいい、というスタンスだが、大切な幼馴染がここまでアプローチしているのに眉一つ動かさない幸人の態度については、どうにも気に食わないのだ。
それだけに、幸人を気に掛ける真里に問い質しているのである。あの男のどこがいいのか、と。
「……なんて、言うのかな。うまく言えないけど……ぽかぽかするの。才羽君を見てると」
「はぁ? あいつ作業着に湯たんぽでも仕込んでやがるのか」
「も、もぉ違うよ。……中学の頃から今まで、わたしの近くに来る男の子って、みんな欲塗れっていうか下心っていうか……何か、イヤな感じの人ばかりだったんだ」
「……まぁ、お前のルックスで悪い男が寄らねぇはずがねぇしな。実際、悪い虫を近づけたくなかったから、親父さんもお前をここに通わせたんだろ?」
「うん……。でも、才羽君には、そういうイヤな感じが全然しないの。ちっとも女の子として見られてないってことかもだけど……それでも、安心して隣にいられる男の人って、才羽君が初めてなんだ」
「へぇ、『才羽君が初めて』かァ」
「ちょ、ちょっと恵! 変なとこ抽出しないでったら!」
恵のからかいに、真里はぼっと顔を赤くする。そんな幼馴染の様子を見遣りながら、彼女は無機質な表情で花壇の世話をしている幸人を見下ろす。
(……ちっ、いけすかねぇ顔つきでアタシの親友を振り回しやがって。ここは幼馴染として女の端くれとして、アタシがガツンと言ってやらなきゃな)
そして忌々しげに、その顔つきを睨むのだった。
◇
「つまり。私の煮え切らない態度が、佐々波様を困惑させている……と」
「そうだ! あんたは結局、真里とどうなりたいんだ? 付き合いたいならさっさと付き合え! その気がねぇならさっさと友達宣言しろ! ぬか喜びさせて真里を泣かせやがったら、このアタシがただじゃ置かねぇ!」
その日の放課後。真里がいないタイミングを見計らい校舎の外れにある花壇へ呼び出した恵は、彼を正座させていた。彼らのすぐ後ろでは生徒達が自宅や部活に向かっている。
幸人は全身から殺気を放つ恵の眼光を前に、眉一つ動かすことなく真摯な眼差しを送っている。多少腕に覚えのある武道家でも戦意を失い、並の男なら失禁するほどの威圧を真っ向から浴びせられて、なおも。
彼は視線を外すことなく、恵を瞳で射抜いていた。
(……こんだけ肝が据わってる、ってこたァ……アタシが怖くて正座してるわけでもねぇんだな。あくまで生徒様の指示だから付き合ってるだけってか)
凄もうが脅そうが、幸人は顔色一つ変わらない仏頂面のまま。微かな震えも怯えも
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