第2話 特別優秀生・佐々波真里
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――それから、七年。
二◯三五年の四月に高校生となり、上流階級の子女しか通えない、と言われる「聖フロリアヌス女学院」へ特別成績優秀枠で入学を果たした彼女は。
「見て、あの子よ! 庶民の子なのに、特別成績優秀枠で入学を許されたっていう……!」
「綺麗ね……庶民の家の子だなんて、信じられない……」
他の入学生から羨望を集めるアイドル的存在となっていた。
上流階級で英才教育を受けてきた令嬢ですら、一握りの天才でなければ辿り着けないという特別成績優秀枠。それに一般家庭の少女が合格したという事実が、彼女に注目が集まる所以なのだ。
生徒だけでなく教員達の間でも、佐々波真里の名は有名であった。それほどまでの偉業を、彼女は齢十五にして成し遂げたのである。
春風に靡く、艶やかなセミロングの黒髪。雪のように白く、瑞々しい柔肌。薄い桜色の唇。少女という歳でありながら、「大人」への成長を感じさせる、均整の取れたプロポーション。
そのスタイルの良さと美貌も、彼女が注目を集める理由の一つだった。彼女と共にこの超お嬢様学校への入学を果たした同級生達は、自分達より(相対的に見て)遥かに貧しい家柄でありながら、努力を重ねて特別枠を勝ち取った彼女に深い尊敬と好意を寄せていた。
しかし。
「ちっ……先生方も他の下級生達も……どいつもこいつも、あの小娘の話ばっかり。何よあんなの、ただちょっとそこらの庶民より頭がいいだけの芋女じゃない」
「だいたい、あんな田舎娘がこの聖フロリアヌス女学院に入学できる今の制度がおかしいのよ。この女学院は由緒正しき子女しか入れないはずよ! それを、いくら成績が飛び抜けて優秀だからって!」
「そうよ……! 学園長も何をお考えなのかしら! より優れた者を上流階級として取り立てるなんて……下々が付け上がるだけなのに!」
真里を含む新入生達を遠巻きに睨む上級生達はその殆どが、強烈な嫉妬心を滾らせていた。
元々、聖フロリアヌス女学院は家柄が裕福な名家でしか入れない。だが、家柄にあぐらをかいて学業を疎かにする学生への戒めとして、近年から一般家庭からの受験を受け付けるようになっていた。
「名家に恥じぬ努力をせねば、一般庶民に出し抜かれるぞ」という、一種の脅しとして。
だが、今年に入るまではその難易度と門の狭さから、一般家庭からの合格者は一人も出ていなかった。それが余計に在学生達を増長させていたのだが。
「佐々波真里……! あの思い上がり娘めっ……!」
「許せないわ、この私達を差し押いて特別成績優秀枠だなんて……!」
初の一般家庭からの合格者である上に、ただ一人の特別成績優秀枠。
その衝撃的なデビューに、誰もが注目を注ぐようになってしまった。
彼女の存在は、単に「庶民
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