第2話 特別優秀生・佐々波真里
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山ほど飾られてるって話だぜ」
「そ、そうなんだ」
「しかもニュースによると最近、この辺でよく出没してるって話だから、もしかしたら生でまた会えるかもって息巻いてんのさ。滑稽に見えるだろうが、堪忍してやってくれ」
「あぁ……『救済の遮炎龍』様……あなた様の勇姿の前では、わたくしの美貌など砂上の楼閣……。あなた様の堅牢な腕でもう一度抱かれてしまわれたら、わたくしはもう骨抜きに……ハッ」
琴海はその間も、恍惚とした表情で「救済の遮炎龍」の像を見つめていたが。
やがて新入生の前だということを思い出したのか、我に返ったように背筋を正した。そしてコホンと咳払いをしたのち、頬を赤らめながら凛々しい顔つきを作り出す。
「ま、まぁその、アレですわ。勉学も結構ですけれど、花の女子高生ですもの。恋の一つでも経験されてはいかがでしょう? きっとあなたをより成長させてくれますわ」
「あはは……そうですね」
そんな生徒会長が可愛らしく見えたのか。すっかり緊張がほぐれてしまった真里は、華やかな笑みを浮かべるのだった。
自分をジッと見据える、用務員の視線には気づかずに。
(……アイツ……)
だが。恵は、気づいていた。真里を見つめる用務員の眼に、普通とは違う「何か」を武道家の勘から感じたのだ。
そうして恵が、鋭い眼差しを用務員に送っていた頃。
「ねぇ、あなた達。佐々波真里と同じクラスでしょ?」
「は、はい……そう、ですけど」
「悪いけど。折り入って、頼みがあるのよ」
吾野美夕は、真里のクラスメート達に声をかけていた。そのえもいわれぬ凄みに、幼気な少女達はなす術もなく身を震わせる。「頼み」という言葉ではあるが、その語気には明らかな「強制力」があった。
そんな気迫に耐えられるほど、この女学院に集まる箱入り娘は精強ではない。「頼み」という名の「命令」に、従う他なかった。
反発する気配のない少女達をじろりと一瞥したのち。
美夕は、歪に口角を吊り上げた。
「敷地の端の旧校舎は知ってるわよね? ――あそこの最上階に、薪を用意してちょうだい」
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