第2話 特別優秀生・佐々波真里
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にはありますのね」
「はい。……七年前、わたしを命懸けで火災から助けてくださった消防士様が、ひどい怪我を負って……亡くなられました。たった一人の、御子息を残して」
そこから語られた、佐々波真里がこの女学院まで登りつめたルーツ。近くでその一節を聞いた用務員の眉が、ぴくりと動く。
「あの時、医療技術がもっと進んでいれば……あの人を、鳶口纏衛様を助けられたら。あの子は、独りぼっちになんてならなかった。だから、わたしが医療界を進化させるんです。もう絶対、あんな思いをする子を出さないために」
「……そうだったのですか。わかりました。その願い、必ずや叶えなさい。その子と、あなた自身のために」
「はい!」
真里の真摯な瞳を前に、琴海も思うところがあったのか。差し出された彼女の手を、真里はしっかりと握り締める。
そんな友情が芽生えた瞬間を、恵や周囲は暖かく見守っていた。
「あの、会長。わたしも、一つお伺いしたいことがあるのですけど」
「あら、何かしら」
そんな時。真里からの質問に小首を傾げた琴海は、彼女が指差す方へ視線を移す。
その先には。
白いマフラーを首に巻き、頑強なプロテクターで身を固めたヒーローの像が飾られていた。
「……あの像、もしかして『救済の遮炎龍』ですか?」
「そのっっっ通りっ! よくぞ触れてくださいましたわっ!」
「ひぃ!?」
刹那。琴海は豹変したように目を光らせ、先ほどまでの気品に溢れた佇まいからは想像もつかないテンションを見せた。
人格が変わったかのような叫び声を至近距離で聞かされ、真里は怯えたように短い悲鳴を上げる。一方、恵や周囲は「また始まった」と目を伏せていた。
「昨年の十二月に初めて姿を現して以降! 今日に至るまでの半年間に渡り! 東京やこの女学院の近辺で活躍している謎のヒーロー! 消防庁と協力してあらゆる火災現場に颯爽と駆け付け、多くの人命を助けては風のように去ってゆく! 人命救助用パワードスーツ『着鎧甲冑』の最大手『救芽井エレクトロニクス』の新製品と噂されつつも、その正体は誰も知らない! そんな謎だらけのヒーローの名こそ! 『救済の遮炎龍』様なのですわ〜っ!」
「え、えっと……」
長々と、最近東京でも話題になっている謎のヒーロー「救済の遮炎龍」の概要を熱弁する琴海。自分がテレビや新聞でしか知らない存在に、ここまで熱を上げる生徒会長の姿に、真里は困惑を隠せない。
そんな彼女をフォローすべく、恵がそっと耳打ちする。
「……この人はな。去年の十二月に起きた火災で『救済の遮炎龍』に助けられて以来、ずっとコレなんだ。あの銅像も、今年に入って会長権限で作らせたのさ。なんでも会長室には、あれのソフビ人形が
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