第34話 蛮勇の群れ
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して、二人の姉がそれぞれの想い人との再会を果たしていた頃。
「いやぁ、すまんなぁわざわざ。おかげで大助かりや。あいつら食うだけ食って、ちっとも片付けせぇへんのやから」
「いえいえ、あの人達もお仕事大変でしょうし……。私にできることなら、何でも手伝わせてください、先生」
「あんった……ホンッマにええ子やわぁ〜。ウチの旦那に爪の垢でも煎じて飲ませてやりたいわ」
祖父母の家で厄介になっていた結花は、隣に住む一煉寺家にて食器洗いに臨んでいた。
つい先ほどまで一煉寺家には、松霧町一の大工である家主と、その部下達が昼食を食べに来ていたのだが――彼らは大量の料理を豪快に食い尽くしたのち、さっさと午後の作業に向かってしまったのである。
家主の妻であり、二学期から結花が通う松霧高校の教師でもある一煉寺賀織は女だてらにその男達の面倒を見ており、今日も彼らが食い荒らした後の食器洗いに追われていた。
結花は明日から新しく世話になる担任のために、その片付けの手伝いに来ていたのであった。
「……しかし信じられへんなぁ。あんたみたいなええ子が、苛められて転校を余儀無くされるなんて。ま、東京はおっかないところやから、理由のない嫌がらせなんていくらでもあるやろな」
「は、はぁ……」
「やけど安心しぃ! あんたが明日から通うアタシのクラスには――アホはおっても悪い奴は一人もおらん。それに、もし他所のクラスから悪い奴が出て来たら――そん時は、アタシが二度と悪さ出来ひんなるまでブチのめしたるわ!」
「い、一煉寺先生……」
「アタシは賀織先生や。もっと肩の力抜いて、今まで損した分、思いっきり青春しいや! きっと……いんや、あんたなら絶対イイ男も見つかるやろ!」
「……はい。でも……いい人なら、もう、います」
皿を洗いながら、親睦を深め合う教師と生徒。そんな中、ふと幼気な少女が発した言葉に、賀織の口元が釣り上がる。
「ほっほ〜……なんや、いっちょ前にやることやっとるやんけ! アタシにも紹介せぇや結花っ!」
「ふえぇっ!? だ、だめですそんな!」
「えーやんえーやん〜。それとも、見せられへんようなカレシなんかぁ?」
「り、陸はまだカレシなんかじゃ……!」
「ふーん……陸っていう男なんやな? まぁまぁイカす名前やんか」
「あっ!? も、も〜! からかわないでください賀織先生っ!」
「わー、結花が怒ってもたー」
「棒読みもやめてくださいっ!」
年上の女性ならではの容赦のないからかいに、結花は皿を丁寧に洗いながらぷりぷりと怒り出す。がさつながら、どこか頼りになる次女の姉を重ねながら。
――その時。
『〜だぁよっ』
「……?」
聞きなれない声が、響いてきた。拡声器によるノイ
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