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フルメタル・アクションヒーローズ
第33話 燃える闘志は、メカの中
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むより早く。反射的に。そこへ駆け付けんとバーニアを噴かしていた。

「雨季ぃぃいぃぃいッ!」

 天を衝くほど舞い上がる水飛沫を上げ、着水する鋼鉄の獅子。そこへ急行する和士は悲痛な叫びを上げ、初めての教え子に手を伸ばした。

 ――が。

「ぷひゅー……あー、やっべ、まじっべー。さすがに死ぬかと思ったぜ」
「……」

 水面から着鎧が解けた陸が、生身一つで浮上して来たのだった。海面に大の字になって浮き上がり、口から噴水のように海水を吐き出すその姿に――和士は手を伸ばそうと前のめりになったまま、空中でずっこける。
 そんな彼と視線を交わした陸は、間の抜けた表情でひらひらと手を振る。

 やがて彼は、辛うじて松霧駅への停車を遂げたリニアストリームを一瞥した。暴走を止めた車体から、大勢の乗客乗員が涙ながらに歓喜して飛び出してくる。

 その中には――

(……怖かったろ。よく、頑張ったな)

 ――キャリーバッグを引き、べそをかきながらも懸命に歩く幼馴染の姿もある。

「おう、伊葉さん。悪いなぁ、違うことしちゃってよ。でもホレ、みんな助かったんだしよ。結果オーライってことにしといてよ」
「……お前という奴は、全く……」

 陸は命令に背いた上に、ストライカーシステムをお釈迦にした。その結果を出したことには違いないが――和士は、さして彼を責めるようなことは口にしなかった。

 ――事実。命じた通りの配置で事に当たったとして、リニアストリームが無事にカーブを曲がり切れたとは思えない。今でこそ松霧駅に到達し、リニアストリームを一目見ようと集まったギャラリーを賑わせているが――陸の判断がなければ、乗員乗客の無事も駅のギャラリーも守れなかっただろう。

 かつて海原凪が同じように、型を破ってでも人命を救った時。ヒルフェン・アカデミーは彼を追放した。
 ならば、自分は。この男を守り抜かねばならない。そう決意していたのだ。

「……大した奴だよ。お前は」
「へっへへ〜ん……あっ」
「……どうした?」

 だからこそ、苦笑と共に手を伸ばすのである。――が、その時。
 手を取ろうとした陸が何かを思い出したかのように、顔を上げると。何を思ったか、突然寝そべった体勢のまま、決めポーズを取り始めた。

「そうだ……慌てて飛び出したから、変身ポーズも決めポーズも出来なかったんだよなぁ。よーし、ならば決めポーズだけでも!」
「……」
「出前ッ! ストライカ〜……一丁ッ!」
「……」
「ご期待通りにただ今さんじょゴボガバベゴボゴボゲボ」

 だが、大の字の体勢から無理に動いたせいで浮力を保つバランスを崩し、気泡を立てて水没してしまう。そんな彼の手を引き上げながら、和士は一瞬でも彼を認めてしまったことを悔い
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