第33話 燃える闘志は、メカの中
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彼が意図した通りに「至高の超飛龍」がバリケードになったとしても、今ほど減速させることは不可能だった。その前に轢き潰されるか、弾き飛ばされていただろう。
――役目を入れ替えた今の方が、効率的であることには違いない。
(……馬鹿野郎! お前は、お前は……!)
だが、テストヒーローを依頼されただけの一般人である陸を、そんな危険な賭けに駆り出すわけには行かなかった。だから安全に近い避難誘導を命じたのだが――彼の性には、合わなかったようだ。
(……!)
そして――遂に。
リニアストリームの車体が、カーブに突入した。猛追しているはずの「至高の超飛龍」を振り切るように、その車体は大きくうねりを上げて曲線を描く。
その進行を食い止めんと、さらに強く組みついて行く「救済の超駆龍」。彼の足元に迸る火花は――より激しく猛り狂う。
「超駆龍の剛脚」に、亀裂が走るほど。
「……ッ! いかん!」
その光景に、和士は目を見開いて焦燥する。右折しようと車体を捻らせるリニアストリームに対し、それを抑える「救済の超駆龍」の左脚部分に負荷が集中しているのだ。
当事者である陸自身にもその感覚は伝わっており、熱にうなされるようにもがく姿が窺えた。
(雨季……!)
それでもなお、手を離さない。左脚の亀裂が広がっても、生じる熱に全身を焼かれても。鋼鉄の獅子は一歩も怯まず、自らを飲み込まんと襲い来る鉄塊に、真っ向から食らいつく。
――やがて。市街地を越え、山を越え。海を渡り、一つの町に辿り着く直前。
カーブが終わるその地点に――リニアストリームは、到達した。
「曲がり切った……曲がり切ったぞ!」
その光景に、和士は歓喜して拳を握り締めた。最後の峠を越えた今なら、もう脱線の心配はない。
リニアストリーム本体も、ようやく停車に向けて速度を落としてきている。これならば、近くの松霧駅に被害が及ぶこともないだろう。
――やはり、逆噴射減速の必要出力を見誤った設計が、そもそもの原因だったようだ。
「……何にせよ、これでもう脱線の危機も去った。雨季、もういい! そこから離脱しろ! あま、き――」
事故は避けられた。
――避けられたが。
「救済の超駆龍」もまた、無事では済まされなかった。
後部を含む全車両のカーブが終わる瞬間、砕け散る「超駆龍の剛脚」。バランスを失い、崩れ落ちるように体勢を崩す陸。
その身が跳ね飛ばされ、海へと墜落するのは――和士が歓声を上げた直後であった。
「あ、まきッ……!」
力を使い果たし、数百キロ超の鉄塊と成り果てた「救済の超駆龍」の機体が墜落していく。
その瞬間を、スローモーションのように目撃した和士は――脳が状況を正確に飲み込
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