第33話 燃える闘志は、メカの中
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めておらず、混迷を極めるさなか。一人の乗員が、息を切らせて駆け込んできた。
「大変です、着鎧甲冑が!」
「なんだどうした! ……着鎧甲冑だと!?」
「はい! 着鎧甲冑が、着鎧甲冑がリニアストリームを止めようとしています!」
「なんだとッ!?」
「助けが、助けが来たのか!?」
「着鎧甲冑が止めてくれるのか!? おい、俺達にも見せろ!」
「落ち着いてくださいお客様、暴れないで!」
「なんっ……ということでしょうかッ! 窮地に陥った私達の前に、突如現れた救いの手! 着鎧甲冑のレスキューヒーローが、このリニアストリームを止めようとしているようですッ! その勇姿、是非とも私達の目に焼き付けたいと思います! ――オラどけやクソ車掌ォ! 玄蕃アナのお通りよォ!」
「玄蕃さんやめてください! カメラ回ってます、カメラ回ってますからぁ!」
突然の報せに沸き立ち、操縦室に駆け込もうとする乗客。何にせよ乗客の安全は守らねばと、阻止する乗員。
暴れ狂う車内は騒然となり、パニックはさらに加速する。
(お父さん、お母さん……! 結友お姉ちゃん、結衣お姉ちゃんっ……!)
その真っ只中で――結花は独り、両手の指を絡め合わせて、恐怖と戦い続けていた。
(陸……陸ぅっ……!)
狂わないために。諦めないために。最愛の男の、名を呼んで。
――そして、カーブ地点まであと数十キロ。もう一分もない――その時。
雲を突き抜け、空を切り裂き――鋼の翼が、天からリニアストリームに肉迫した。
(もはや手段は選べない。この身をバリケードに、少しでもあのポンコツを減速させる!)
捨て身の決意で、コクピットから飛び出す深緑のパイロットの名は――伊葉和士。その身に纏われる黄色の翼が、唸りを上げて羽ばたいた。
『Sailingup!! FalconForm!!』
電子音声と共に装着シークエンスを終えた「至高の超飛龍」が、大空を駆け抜けリニアストリームを一望する。
(雨季の奴は、今頃駅に先回りして住民の避難を終えている頃だろうか。最悪、脱線が避けられないとしても……近くの駅への二次災害だけは回避しなくては)
陸を比較的安定な避難誘導に回し、自身の体は捨て身のバリケードに使う。僅かな時間でその作戦を決断していた和士は、死を覚悟の上でリニアストリームに接近していた――
(……ッ!?)
――が。そこで繰り広げられていた死闘に、彼は絶句する。
自分が引き受けるはずだった、捨て身のバリケードを――先行していた陸が、実行しているのだ。その身を、盾にして。
(あ、あいつ……! 避難誘導に向かえって、言っただろうがッ……!)
命令違反には違いない。
だが、強く非難はできなかった。
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