第31話 ツナガルオモイ
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ックが導入された。これによりジェット噴射の角度を反転させ、逆噴射による緊急減速を実現。減速不能による墜落事故は激減した。
だが、それでも事故が止まなかったのは――その逆噴射の難易度が原因だった。
自在にジェット噴射の方向を調整できる――と言っても、それを「寸分違わず正確に」反対方向に向けられなければ、明後日の方向にジェット噴射が行われ、機体は予期せぬ回転動作を起こし、事故に繋がる。
今現在「救済の超飛龍」と命名されているフェザーシステム二十一号からは、その操作も自動化されたOSが組まれたが――それまでのデータ収集期間では、操縦ミスによる墜落死という新たな問題が多発していた。
人間一人を満足に飛ばす小さな飛行ユニット一つのために、それほどの人命と時間が失われてきた。そのノウハウがある時代に生まれて来たモノとはいえ、勝手の違うリニアモーターカーに流用して、満足に機能するだろうか。
――安全に、人を運べるのか。
それが、フェザーシステムに纏わる悲劇をその眼に焼き付けた和士の、懸念であった。
(「企業秘密」のために詳しくは探れなかったのが痛いな……。設計者がリニアモーターカーに合わせて出力を調整しているのなら、杞憂に終わるだろうが……)
速さを追求した流麗なデザイン。何も知らない人々が諸手を挙げて称賛する、その新時代のスーパーマシンを見つめ――和士は席を立った。
(――万に一つも。罪なき人々の安全が脅かされるようなことは、あってはならない)
そして、黒い手袋を取り――赤い両手の義手を露わにする。
一年前。瀕死の雲無を抱きかかえて秘密飛行場に駆け込んだ和士は、オーバーヒートした「動力強化装置」から発せられた高エネルギーに両腕を焼かれていた。
彼の治療も雲無の集中治療と並行して行われたが――彼自身が夏に雲無の救命を優先させたため、両腕の処置は不十分なものとなり。
……結果として彼の両腕は壊死。切断を、余儀無くされたのだ。
以来、彼は雲無の改造手術のデータを基に造られた義手を身に付け、ヒーロー活動を続行していたのである。――ストライカーシステムの開発と、並行して。
(こいつの眠りを覚ますのは気が引けるが……準備はしておく必要はあるかも知れんな)
彼は過去に味わった痛みを思い出すように、感覚のない腕をさする。そして、予想しうる有事に備え――闇の中に佇む「超飛龍の天馬」を見上げるのだった。
(「白」なら、それに越したことはない。だが、仮に「黒」だったとしても。俺達は人々の未来のため、「黒」を「白」に捻じ曲げねばならないんだ。わかってくれ、「至高の超飛龍」)
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