第31話 ツナガルオモイ
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い、という浅ましい本心も、全て丸裸にされてしまう。
(でも、このまま何もないような顔で陸に会うなんて、できない……。だから、「時間」が欲しいの。その「時間」でちゃんと自分の罪と向き合って、その上でちゃんと……今度こそ、気持ちを全部伝えられるように。どんな結末でも、泣かないように……)
直に言葉を交わす必要はない。数行にも満たない文章でも、想いは伝わる。幼馴染には、そういう繋がりがある。
遂に手に入った結花の返事から、携帯の向こう側で涙する幼馴染の想いを、察した陸は。
「……」
携帯を切り――再び布団の上で大の字になる。広く逞しい胸元に、その端末を置いて。
(……やっぱし。それくらい好きだったってことだよなぁ。コレは)
――自分の本心を改めて実感した陸は。幼馴染との幸せな毎日でも夢見ようと、瞼を閉じるのだった。
◇
その頃。
薄暗い研究室の中で、部屋全体を妖しく照らすディスプレイの光を、苛烈な瞳が射抜いていた。
「……」
キーボードを絶え間無く叩き、ディスプレイに視線を釘付けにしている男――伊葉和士の目には、今年から初運行となる最新鋭リニアモーターカー「リニアストリーム」の映像が映されていた。
救芽井エレクトロニクスから一部の技術を買い取った企業が、総力を挙げて開発したという最新型のリニアモーターカー。
フェザーシステムの推進ジェットを応用して開発された超加速システムにより、従来のリニアモーターカーを大きく凌駕した速度を誇ると言われている。
その最高時速は七百五十キロ。文字通りに弾丸級の速さがウリと、昨年から幾度となくメディアで喧伝されていたニューマシンだ。
その初運行が、月末に行われることになっている。着鎧甲冑の技術を応用した乗り物というだけあり、関係者各位や一般市民も期待を寄せているようだった。
――だが、伊葉和士だけは。
そのリニアストリームの勇姿を、訝しむように睨んでいる。
(……フェザーシステムの推進ジェットは、確かに強力だ。だが、フェザーシステムの着鎧甲冑があの推力をコントロールできるのは、間に合わない「減速」を「逆噴射」で自在にカバーできる飛行ユニットの特性にある)
総重量数百キロの鉄塊である、二段着鎧した着鎧甲冑を縦横無尽に長時間飛行させるエンジンは、確かに凄まじい。リニアモーターカーのエンジンに使う発想そのものは、悪くはない。
しかし。あの高出力が生み出す速度を制御するには、通常の減速では間に合わないケースが多い。
――事実、あの実験小隊の初期メンバーはそのケースのために、雲無幾望を除く全員が殉職している。
以降、それを補うためにフェザーシステム十号からは、ジェットの噴射角を自在に操作できるギミ
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