第30話 ストライカーシステム
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く走れるもんも走れねぇもんなぁ」
「その通りだ。お前をスカウトしたのは、お前に体力や筋力で勝る外国人ランナーを相手に、その極限まで効率化された『フォーム』を武器に渡り合っていたからだ。――まぁ尤も、お前自身は無意識にやっていたんだろうがな」
「うへへ、お察しの通りで。しかし、伊葉さん何でも知ってんな。ひょっとしなくてもストーカー?」
「お前のことは、一から十まで調べ尽くしてある。ストライカーシステムをより完全なものとし、より多くの人命を『犠牲を一切払うことなく』救うためにな。そのための行動がストーカーなら、それで結構だ」
「お、おう……?」
ちょっとからかうつもりが、マジな表情でガチな返事を返されてしまい、陸の方が言葉を失ってしまう。そんな彼の様子を見遣り、和士は特に追及することもなく次のテストに移った。
「――さて。では、次のテストだ。ここから二十メートルの助走で、あそこの廃病院の屋上まで跳べ」
「えーッ!? ここから二十メートル助走で、あそこまで!? あそこ一キロくらいはあんじゃねぇの!?」
「グダグダ抜かすな。さっき出した自分の『違う世界が見えちゃった系』の速さを信じろ」
「うへぇ……」
廃墟となっている病院までの距離は、目測でも一キロ近くの距離がある。ここからたった二十メートルの助走でそこへたどり着くなど、通常の感覚では想像もつかない。
つい昨日まで着鎧甲冑に触れたこともない陸にとって、この超人的感覚は未知の世界であった。
――だが、彼は天性の負けず嫌いでもあった。ここで「無理」と降りるのは、彼のプライドが許さなかったのだ。
「……よ、よぉし。こーなったらやっちゃうもんね。オレやっちゃうもんね!」
「覚悟はいいようだな。では――始め!」
「――ぬぉりゃあぁぁあぁあぁああッ!」
そして乗せられるままに爆走。瞬く間に地を蹴り、二足歩行の獅子が空の彼方へ飛んでいく。珍妙な風切り音を立てて。
「……あっひょぉぉぅうぅんあぁばばばばばばばば!」
だが、絶叫マシンが大の苦手という弱点が仇となったか。放物線を描き、目的地へと滑るように急降下していく陸は、マスクの中で悲鳴を上げる。
その珍妙で情けない叫びが通信で和士の耳に響き渡り、彼はあまりの惨事に顔をしかめた。
だが、いくら叫んだところで落下は止まらない。彼の機体はそのまま流星の如く廃病院の屋上――
「へべレバッ!」
――の、上部にある錆びた看板に激突。看板は大の字に凹み、暫くそこにへばりついていた陸は、引っぺがされるように落下。
その下には――アンテナが一本。
「あ」
和士がそれに気づいた時には、何もかも手遅れであった。
刺さってはいけないところに、刺さってはいけないものが、ブスリ
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