第30話 ストライカーシステム
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(なんだかんだ言っても、やはり陸上選手だな。仕草一つ見ても、安定感がまるで違う)
そして、右手に持ったストップウォッチを見ながら左手を振り上げた。その動作を横目でチラリと見遣った陸は、言われるまでもなく腰を上げて発進体勢に入る。
「――ここから向こうの端まで、往復で約二キロある。スーツの特性だの出力だの難しいことは気にせず、思うように最速で走ってみろ」
「ウス!」
そして――和士からの指令を受けた陸が、仮面の下でほくそ笑む。久々の陸上に、元短距離選手の血が騒いだのだ。
「用意――始め!」
その叫びが陸に届く瞬間。
陸は、姿を消した。
(トップスピードも、そこに入るまでの速さも桁違いだ……やはり、全く数値が違う)
そして、再び和士の前に現れた。吹き上がった土埃が地に落ちる前に、新たな土埃を上げて。――やがて減速し、足を止めた陸は信じられない、という感情を身振り手振りで表現しながら駆け寄ってきた。
「おいおいおい! とんっでもなく凄いなコレ! 何コレ何コレ、何か違う世界が見えちゃった系なんですけど!」
「――約二キロの道を往復で九秒ジャスト。間違いなく時速七百五十キロ以上は出ているな……。比喩じゃなしに、弾丸並みの速さだ」
「え? そんなに速かったのオレ? 道理で違う世界が見えたはずだよなぁ〜……」
「自分のスピードに動体視力が追いついていないせいだろう。そういう時はフィーリングで制御するタイミングを見計らって使いこなすんだ」
「フィーリングねぇ……慣れるまでに人を跳ねそうで怖えな」
自分が生み出した予想以上のスピードに、かつて自分の足を奪った事故を思い出し――「はわわ」と身を震わせる。そんな陸を見遣り、和士は深く頷いた。
「確かに、な。要求されるフィーリング能力は、俺の比じゃないだろう」
「へ? 和士さんもコレ、使ったことあんのか」
「当たり前だ。自分で使って大丈夫と判断したシロモノじゃなきゃ、他人に触らせたりはせん。――ちなみに俺がそいつを着て走った速さは時速五百二十キロ。ハッキリ言うが、お前とは勝負にならん」
「自分でそれ言っちゃうの?」
「事実だ。それに、それだけ最後にモノを言うのが『フォーム』であることもハッキリしたからな」
「フォーム?」
陸はなんでそれが、小首を傾げる。単純なスーツの出力や、筋肉量のことを言われるとばかり思っていたのだろう。
「ああ。如何に着鎧甲冑であろうと、最先端のパワードスーツであろうと――科学力による筋力補助には限界がある。人間が鍛えられる筋力にも、当然ある。ならば最後に力を与えるのは、その使い方。持てる力を最大限に活かす、その人間だけが持ち得る技術にある」
「それがフォームってか。確かにフォームが悪いと、速
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