第30話 ストライカーシステム
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出そうとしていた。
「よし……それでは、テストを始める。――最初に言っておくが、間違えても着鎧の順番を忘れるなよ。万一、先に増加装甲の方から出してしまったら、数百キロの鉄塊が直接お前の肉体に張り付くことになる」
「ウ、ウッス! ――よぉぉおしッ!」
そんな状況など想像もつかないし、したくもない。陸は息を飲むと、数回の深呼吸を経て――黄色の腕輪を嵌めた腕を振るい、正拳突きのように突き出した。
「着鎧ッ……甲冑ッ!」
刹那、腕輪から迸る閃光が陸の全身を隙間なく包み隠し――光が消えた瞬間、彼の体は黄色いヒーロースーツに固められた。マスクのフェイスシールドが、太陽の輝きを浴びて眩い照り返しを放つ。
「よっし! まずは第一段階!」
「……なんだ、さっきの変な踊りは」
「え? 変身ポーズに決まってんじゃん、ヒーローなら当然っしょ」
「……」
あっけらかんとした表情でそう言ってのける陸に、和士は片手で顔を覆って空を仰ぐ。ここに来て初めて、彼は本格的に自分の人選を呪うのだった。
「……ッしゃあ、次はいよいよ第二段階だ! 見ててくれよ、伊葉さんッ!」
そんな和士には目もくれず、陸は全力で左脚を降る。太腿が胸に密着するほど振り上げられた足先が、天を衝いた。
(こいつ、本当は新体操選手なんじゃないか……?)
「――うぉぅりぃやぁぁあぁあッ!」
その驚異的な柔軟性から放たれた踵落としが、平地の上に炸裂する。一定の衝撃がなければ感知しない足裏のセンサーが、陸の一撃に反応し――トリコロールカラーの電光を放った。
左足から迸る三色の稲妻が、陸の黄色いスーツに纏わり付いて行く。頭。両肩。胸。腰。両腕。両膝。
全身のあらゆる部位に、トリコロールカラーの増加装甲――を模したバッテリーパックが張り付いていく。その形状は猛獣を髣髴させる猛々しいデザインであり、特に獅子の顔と鬣をあしらった両肩のアーマーは、ひときわ異彩を放っていた。
『Blazingup!! LionForm!!』
そして――装着完了を報せる電子音声が、装着シークエンスの終わりを告げる。
迸る電光が消え去り、プロテクターの隙間から蒸気が吹き抜けた瞬間――着鎧の完了を感じ取った陸は、左脚を大仰に振り回して即興の決めポーズを取る。
「出前ェ! ストライカ〜……一丁! ご期待通りにただ今参上ッ! ――なんちて!」
「ぶち殺すぞ」
「アッハイスンマセン」
直ちに怒られたが。
「全く……ふざけてないでさっさと準備しろ。クラウチングスタートの体勢を取れ」
「ウッス!」
陸は和士に言われるまま、おもむろに慣れた動作でクラウチングスタートの体勢に入る。その堂に入った佇まいとオーラに、和士も目の色を変えた。
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