第30話 ストライカーシステム
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た各国の政府や支社からは、何度もコンタクトを受けた』
『じゃ、どうして?』
『信用ならなかったのさ、腹黒い企業の陰謀をバックにしてる連中がな。仮に送られてきた奴自身が真っ白な奴だったとしても、そいつの「背後」には必ず何かしらの黒い影がチラついているものだ。そんな連中の中から選ぶくらいなら、俺が自分の目で選出する。企業や政府の介入が及ばないところから、な』
自分の名声や立場より、今助けを求めている人々を優先したはずなのに、ヒーロー業界から追放された親友。不完全な機械の体にされ、家族の元へ帰ることも叶わずに馬車馬のように酷使された、将来の義兄。
そんな彼らとの出会いと別れが、和士にヒーローとしての成長と――救芽井エレクトロニクスへの不信を齎していた。
和士はかつて自分を導いた戦友達を陸に重ね、その穢れない瞳を見つめていた。
『オレなら信頼出来るって?』
『少なくとも俺の中では――な。積み上げてきた栄光を投げ捨ててまで、たった一人の少女に命を懸ける。そんなことが出来る奴は、ヒーローを仕事にしてる連中ほどいないものなのさ。奴らは大抵、名誉欲に溺れて売名のためにヒーローをやっている。本当に人のために戦えるヒーローなんて、実のところ一握りしかいないんだ』
『ホントかよ……』
『俺自身もそうだ。世間じゃ俺は「救済の超機龍」の再来だとか日本一のレスキューヒーローだとか言われてるが――その評価に見合う男になったと思ったことなど、一度もない。自分の「名誉」のために本当のヒーローを蹴落としてしまうような奴が、のし上がってしまう世の中なんだよ』
自虐するように笑みを浮かべる和士に対し、陸は小首を傾げて覗き込む。言ってることがわからない、と言いたげな表情だ。
『そうかな……。ヒーロー業界のことはよく知らないけど、アンタがそんな悪者だとは思えない。そんな「眼」じゃないよ、アンタ』
『「眼」……か。フフ、光栄な限りだが、お前には見る目がないようだな』
『ちぇ、いちいち一言多い人だな。……あいにくだけど、オレは親父の店を継がなきゃならない。ちょびっと手伝うくらいならまだしも、この「道」には進めねぇぞ』
『わかっている。お前の任期はせいぜい一ヶ月といったところだ。あとの余生はその女の子のために、悔いなく過ごせ。――最期の一瞬まで、家族の温もりの中で』
『……?』
そして、どこか含みのある和士の言葉に眉を顰めながらも――彼は、ストライカーシステムのテストを引き受けることとなった。
陸上を失った彼が、それ以外の何かしらの功績で自信を取り戻すきっかけになれば――という、忠道なりの気遣いを汲んでのことである。
「……」
そして――今。陸は生涯関わることなく終わるだろうと思っていたレスキューヒーローの道を、踏み
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