暁 〜小説投稿サイト〜
フルメタル・アクションヒーローズ
第29話 天坂忠道の苦悩
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託無い笑みを浮かべている。
 赤いTシャツの上に炎柄のベストを羽織った彼は、野暮ったい黒のGパンには不似合いなほどの長い脚を組んでいる。何を着ても絵になる美男子が、そこに佇んでいた。

「しかし、あれからもう三ヶ月とはなぁ。早いもんだぜ、この足にもすっかり慣れたしよ」
「ああ……。しかし、君はもう陸上が……」
「だからさぁ。オレがいいって言ってんだから、それでいいじゃない。おっちゃんまでいつまでもそんな調子じゃあ、結花だって立ち直れねぇぞ」
「わかっているとも……わかっているさ……」

 三ヶ月前の、五野高の入学式。通学途中に横断歩道から飛び出した天坂結花を、トラックから庇った陸は利き足である左脚を轢き潰され、陸上の道を絶たれた。
 結花の父であり、天坂総合病院の院長である天坂忠道(あまさかただみち)は、事態を知って緊急手術を行ったが――彼の足を復元するには至らなかった。

 ――娘と陸の仲は忠道も深く知っており、小さい頃から結花を守り続けてきた陸のことは、彼が陸上で成功する以前から実の息子のように想っていた。自分が男児に恵まれなかったことも理由の一つだが、それでも彼にとっては陸は息子同然だったのだ。
 結花も心底彼に惚れ込んでいるし、ゆくゆくは陸上選手として華々しく輝く彼を支える妻として、「らあめん雨季」を切り盛りしていくのだろう。そう確信した、矢先の出来事だった。

 陸は左脚を失って陸上を辞めることになり、結花はショックのあまり引きこもってしまった。もうすぐ夏休みという時期なのに、彼女は一度も学校に行っていない。
 忠道自身はもちろん、姉の結友や結衣、母の結香梨(ゆかり)も懸命に励まし、従姉妹の佐々波真里(さざなみまり)も見舞いに駆け付けたのだが――結果は芳しいものではなく、部屋から出るようにはなっても外出する気配は見られない状況が続いている。

 この件の被害者である陸自身も、一度は見舞いに来たのだが――彼女は義足になった陸を見るなり怯えて部屋に逃げ込み、泣きながら謝罪の言葉を叫ぶようになってしまった。
 さすがにこれには陸も堪えてしまい、以降彼は天坂家には来ていない。下手に刺激して自殺にでも走られたら、本末転倒だからだ。

 ――彼女が外に出られない原因には陸への罪悪感もそうだが、学校への恐れも含まれていた。
 期待の超新星として華々しく高校デビューするはずだった陸の夢を潰し、学校にも来ない。さらに幼馴染という理由だけで陸に庇われ続けている。
 そんな彼女を周囲がいいように思うはずはなく――実際、陸が退院して学校に復帰した時、彼女が座るはずだった机は傷と落書きだらけになっていた。
 どれだけ拭き取っても消えない落書き。満足に机として機能するかも怪しいほどの傷。その悪意を目の当たりにした陸は烈火の如
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