暁 〜小説投稿サイト〜
フルメタル・アクションヒーローズ
第3章 着鎧甲冑ドラッヘンストライカー
第28話 雨季陸という男
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だ。

 保育園や幼稚園で苛められた時は「ゆかをいじめるなー!」と男子達を相手に大立ち回り。小学校に入り、周りの女子達から陰湿な苛めを受けた際は「結花を苛めるってことは宣戦布告ってことだな! オレは逃げも隠れもしねぇ、文句ある奴は掛かって来い!」と周囲を一喝。
 中学校に入れば、苛めから守るために自分の目が届く陸上部へと、マネージャーとして誘い入れた。

 そのことでどれほど周囲からからかわれても、彼は「オレはやましいことなんてしてない。恥ずかしがることなんてない」と胸を張り、妬む周囲を黙らせるほどの実績を陸上で叩き出してきた。

 ――そんな彼に結花が熱烈な想いを抱いてしまうのは、ある意味では必然だったのかも知れない。
 それを自覚してからの彼女は、彼への献身にのめり込んでいた。

 朝早く彼の弁当を作り、早朝の練習をそっと見守り、疲れているようならタオルとドリンクを手に駆けつける。
 そんな毎日が、彼女の心に満ち足りたものを与えていた。

 そして、時は過ぎ――二◯三四年四月。
 結花は自分の半生を占めた初恋に、一つの決着を付けようとしていた。
 告白である。

 都内の高校「五野寺学園高校(ごのでらがくえんこうこう)」、通称「五野高(ごのこう)」への入学を決めた二人は、桜が舞うこの季節の中、入学式への道を歩んでいる。

「今日からオレらも高校生かァ〜……。なんか実感沸かねぇよな、結花」
「そ、そうだね。でも、きっと一週間も経たないうちに馴染むよ。どこでも構わず居眠りしちゃう陸ならね」
「あっはは! そうかもな! んじゃ、またオレが寝てたら上手い具合に起こしてくれよ。先生のチョークが飛んでくる前に、さ」
「もう。最初から私をアテにしないでよ! たまには自分で宿題もやらなきゃダメだよ?」
「ちぇ。結花先生は厳しいなぁ」
「厳しくありません! あと先生でもありませんっ! ――私がなりたいのは、こ、こいび……」
「おん?」
「えっ! えっ、えっと、その……」

 このタイミングで想いを告げ、華の高校生活を恋人同士として過ごしたい――それが、結花の願いであった。

 黒い髪を春風に靡かせ、少し着崩した制服姿で並木道を歩く幼馴染の姿は、少女の瞳には輝いて見えていた。
 百八十八センチの長身と、百四十五センチの幼児体型ではアンバランスにも程があるだろう。だがそれでも、彼女は想いを告げることに躊躇いはなかった。
 そんな理由では引き返せないほどに、強い想いなのだ。

(……い、言うしかない。絶対、絶対伝えて……ちゃんと陸と、愛し合うんだ……!)

 震える手を握り締め、ゆでだこのように顔を赤らめ――結花は、横目で最愛の幼馴染を見上げる。中学陸上競技会のスターとは思えないほど、だらしのない表情。
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