暁 〜小説投稿サイト〜
フルメタル・アクションヒーローズ
第26話 自分だけに誇る「名誉」
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 雲無が、来るはずのなかった目覚めの瞬間を迎えたのは――基地の中にある見慣れた病室のベッドであった。

「……ぇ……」

 意識が覚醒していくに連れ、今の自分がベッドの上に横たわっているのがわかる。思考が纏まり始めて程なく、それが予想だにしなかった状況であることを思い出した。
 ――あの時、自分は死んだはず。あの身体から血も力も抜け落ちて行く感覚は、死ではなかったというのか。

 狼狽える余り声も出ない雲無は、思わず胸をさする。手に触れた包帯の感触から、手厚い治療を受けていたことがわかった。

「……!」

 ふいにベッド脇のデジタル時計に視線を移すと――そこには、九月二十二日と表示されていた。……丸一ヶ月以上は、眠り続けていたことになる。

「つっ……!」

 とはいえ、元々はあの時に死んでいたはずの身。一ヶ月眠り続けていたからと言って、完治するはずもない。
 周りの様子を見ようと身じろぎした少年の胸に、強烈な激痛が走った。――その時。

「……え?」

 ガチャリ、と扉が開かれ――沈痛な面持ちで俯いていた和士が現れた。
 だが、身を起こした雲無の姿を目の当たりにした彼は、表情を驚愕の色に染め――持っていた花を落としてしまった。近くにある花瓶の花を取り替えに来たのだろう。
 彼は花に目もくれず、目を見開いたまま雲無に駆け寄り、両肩に手を載せる。

「雲無! よかった……意識が戻ったんだな! 緊急冷却治療が間に合ったのか……!」
「和士……さん、僕は……」

 家族のように破顔する和士の様子に困惑しながらも、雲無は最後に意識があった時のことを思い返す。その瞬間、彼の脳裏に名も知らぬ美少女の姿が過った。

「そうだ……和士さん、あの女の子は!?」
「心配ない、彼女も麗も無事だ。フェアリー・ユイユイは流木の破片で擦り傷を負った程度だし、麗は石が軽く当たったくらいだ」
「フェアリー……? え? あの子、外国人だったんですか?」
「……」

 キョトンとした表情の雲無を前に、和士は生暖かい眼差しで少年の顔を見遣る。「そりゃ、山暮らしだった上に世俗に興味のないお前は知らないだろうな」と、ひとりごちて。

「……まぁ、なんだ。あの一件で被害を受けた二人は、もう心配ない。傷も浅かったし、とうに回復してる。……むしろ二人とも、お前の心配をしてたよ。なにせ、意識がない上に全身が過熱状態に陥ってたんだから」
「そう、だったんですか……ん!?」

 その時、和士の両手に巻かれた包帯が、雲無の目に留まる。先程の過熱状態という話と照らし合わせた雲無は、それが意味するものを素早く把握した。

「和士さん、その手は……!」
「ん? ああ……いや、たいしたことじゃないさ。お前のダメージに比べればな」
「和
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