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フルメタル・アクションヒーローズ
第25話 風の唸りに、血潮が叫ぶ
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綺麗な女の子!? どうしてこんな場所に……!? ――いや、今はいい。とにかく今は、なんとしてでも――あの子を助けなければッ!)

 その見覚えのある姿に目を丸くしつつも、雲無はあくまで熱く――それでいて冷静に、次の飛翔に向けて前傾姿勢となる。
 そして――死神から送られる「最終通告」に当たる、胸の痛みを敢えて無視する彼は――拳を震わせ、地を蹴る。

「……死なんざ上等だ、このクソッタレがァァァァッ!」

 血は、争わない。妹以上の猛々しさが、雲無という少年の温和さを奪い取っていた。妹以上の怒号を上げ、助けを求めてもがく彼女に突撃していく。

 崖の端を蹴りつけ宙へ飛び出し、バーニアを噴かせて少女のもとへ。唸る痛みと苦しみに顔を歪める彼の心は、仮面の最奥へと封じられていた。
 打算も何もなく、ただ愚直に翔ぶその姿は――

(……! あれ、は……!)

 ――水に蹂躙され、意識が混濁する中にいる少女の眼に焼き付けられ。彼女の胸中に、今までにない感情が広がって行った。
 ライトグリーンの翼を背に、唸るように水面を翔ける仮面の騎士。その背後では、同色の飛行機が天翔る天馬の如く上昇していた。

(王子、様……?)

 白馬の王子と呼ぶには、無骨過ぎる見た目だが。欲に塗れた男達しか知らない少女にとって、その邂逅は強烈であった。

「こちら雲無、要救助者を発見! 救助に向かいます!」
『なにっ!? もうそんなところまで……! 俺が来るまで待てそうにないか!?』
「すぐそばで川が岩山に阻まれています! 急がないと彼女が危ない!」
『く……わ、わかった。だが、無理はするなよ!』

 和士からの言葉が終わる頃には、すでに少女との距離は目と鼻の先であった。雲無は僅かに逡巡したのち――彼女を素通りする。

(向かいから着鎧甲冑のボディで流されている最中の彼女に接触したら、衝撃で骨を折るかも知れない。――だったら!)

 そして――僅か数メートル先まで飛んだ瞬間、彼は新体操の如く体を上下に急旋回させ、反対方向への急加速に突入する。

「ぐっ――あぁあぁあぁあああぁあッ!」

 その切り返しに伴う全身への圧力が、すでにボロボロになっていた雲無の身体にさらなる追い討ちをかけた。マスクだけではなく、スーツ全体の各関節部から鮮血が噴き出してくる。
 それでもなお雲無は寸分も怯まず、躊躇わず――真っ赤に染まる視界に映る、少女の涙に慟哭する。この一瞬のために、自分の半生は在ったのだと、万感の思いを込めて。

 ――先程とは打って変わり、少女を追うように猛進する雲無の手は、下から掬い上げるように水没しかけた彼女の手を掴む。そして、一瞬にして少女の肢体を腕一本で引き上げた彼は――彼女の身体を抱き締めながら、最期の力を振り絞るよ
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