第24話 和士の選択
[2/3]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
かも自在に滞空可能な着鎧甲冑なんて、どこのデータベースにも――!」
「訳は後だ、全くムチャクチャしやがって! 待ってろ、今助けてやる!」
「う、うん……あッ!?」
「ぐッ!?」
だが、「至高の超飛龍」の深緑の籠手が彼女の白い手を掴む直前――流れが勢いを増し、彼女が捕まっていた岩が大きく傾いた。
さらに彼女の身体をロープで繋いでいた岸側の岩が、川の勢いに接地面を削られふらつき始めている。
――命綱の根元まで流されれば、麗も少女も自分で身体を支えられなくなる。そう判断した和士は急いで麗の手を掴み直そうとする――が。
「きゃあぁぁあぁあ……!」
「ああっ!」
「……クソッ!」
水の流れに二人が負け、支えるものもなく濁流に放り出されるのが――先だった。
和士は咄嗟にバーニアを噴かしたまま着水し、命綱ごと流されかけた麗の豊満な肢体を抱き留める。だが――この弾みで投げ出された少女の手は、深緑のスーツに触れることさえ叶わず……濁流の中へとその姿を消して行った。
「そんなっ……そんなぁ!」
悲痛な表情で、麗は少女が流された方向へと手を伸ばす。彼女の人影は、和士達が翔んできた方向へと流れていた。
(流れが速すぎて今からでは追いつけん……どうする!? ――そうだ、流れる先には雲無がいたはず! あいつに連絡、を……)
水に足を取られ、思うように飛行するための姿勢が取れない。そんな状況に平静を奪われた和士は、とっさに雲無を呼ぼうと腕の無線機をマスクの正面に構え――その寸前で手を止める。
――できるはずがない。彼は今、「要救助者」の一人なのだ。
「……くそッ!」
着鎧甲冑を着ている以上、流される心配はない。だが、波に煽られ体勢が安定しないまま無理に飛び出せば、明後日の方向に急発進して事故に繋がる。だから先程、雲無を助け出した時も水面に触れまいと心掛けたのだ。
――先に麗の身柄を岸まで運んで安全を確保し、その後に少女の救出に向かう。それが本来あるべき手順である。急がないと流されてしまうから、と無理に飛行しようとして事故を起こすより、時間を掛けてでも歩きで川を渡り、確実に一つでも多くの人命を救う。それが、レスキューヒーローとしての在るべき姿なのだから。
だが、たった僅かでも助けられる可能性があるのなら――懸ける他ない。そう判断してしまうのが、伊葉和士という男であった。
「……雲無、聞こえるか!」
『は、い。こちら雲無』
「すまない、一人助け損ねた! ビキニを着た女の子だ! 今、お前がいる方向へ流されている!」
『……!』
「だが最優先されるべきは『お前を含む』より多くの人命だ! 人一人抱えたままだが、俺も向かう! お前は下手に動かず、彼女の姿が見えたら状況を報告しろ
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ