第23話 橘花麗の戦い
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機が飛び出していた。滑らかな曲線を描いて、雨空を舞う彼らは――マスク内のズーム機能を駆使して、現場の状況を確認する。
「麗……! 麗なのか……!」
「……あんのバカ、大人しく待ってろって言ったのに!」
ズームした先に広がる光景に、和士は目を逸らして深く息を漏らした。――妹の窮地を前にした雲無が、胸を抑えて異様な量の汗をかいていたことには気づく気配もなく。
「もう一秒たりとも無駄にはできない! ――いくぞ雲無!」
「はい!」
もはやこうなった以上、自分達が迅速に解決に向かうより他はない。和士と雲無は同時に判断し、深く頷き合う。
そして言うが早いか、二人は同時に前方回転しながらコクピットを飛び出して行く。唸る風と雨に煽られながらも――彼らは体勢を崩すことなく空中で身構えていた。
――やがて二人の頭上に、別れたジェット機からプレゼントが送られて来る。
和士は深緑のスーツの上に、黄色の飛行ユニットを装着。雲無も自身の赤いスーツの上に、ライトグリーンの飛行ユニットを纏う。
『Sailingup!! FalconForm!!』
『Sailingup!! FalconForm!!』
二段着鎧の完了。その進捗を報せる電子音声が、雨の音にかき消されて行く。それでも彼らは、恐れることなく現場へ向かおう――
「今日で全て終わらせるぞ、雲無! ……雲無?」
――と、した時。いつもの訓練とは全く違う流れに、和士は思わず振り返る。普段の訓練では、必ず雲無が前に出て先導していたのに、その雲無の姿が見えなかったのだ。
「……!」
それが意味するもの。その答えは、振り返る先に待っていた。
胸を抑え、マスクの隙間から赤い滴りを雨粒に混じらせた雲無は、何かを告げることも叶わず、地に吸い寄せられるように降下を始めていた。
――その先は、濁流と化した川。
「……雲無ぃぃい!」
事態を察した和士が、咄嗟に雲無目掛けて急加速したのは、その直後だった。
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