第22話 雷雨が呼ぶ試練
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性能で劣る二十一号パイロットのあなたが、随伴する必要はないはず」
「レスキューヒーローは片方に二次災害が発生した事態を想定して、バディで行動するのが鉄則です。フェザーシステムの模範となる僕達が、大元のセオリーに背くわけには行きません。それに隊長を護るのが、隊員の務め。――それは僕より、元レスキューカッツェのあなたの方がよく知ってるはずでしょう?」
「……決意は、固いのね」
少年にとっては、もう引き返せないところまで来ているのだろう。自分の死を以てしてでも、フェザーシステムを完成させる。
それ以外に自分という人間の存在意義などない、というほどに。
――だが、その道も今日で終わる。それならば……存在意義が終わるのならば、家族の元で次の「意義」を見つけることはできないか。
そう、声を掛けようとした時だった。
「……え?」
周囲が、徐々に暗くなって行く。――飛行場の照明が消えたわけではない。
「……!」
肌に伝わる湿気。冷ややかになっていく空気。異様な暗さの実態である――上空を覆う闇。
予期せぬ天候の急変は、瞬く間に夏と雲無の目の色を変えた。矢継ぎ早に降り注ぐ豪雨を目の当たりにした夏は、ようやく終わるはずだった任務に水を差された思いで肩を落とす。
「山の天気は測り難いとは言うけれど、まさか今日に限ってこんな……」
「……そうですね。かなり風も荒れているようですし、最終フライトは日を改めて――」
だが雲無はそこまで落胆した様子もなく、事務的な口調で予定変更を提案する。最終的にフェザーシステムが完成しさえすればいいのだから、何が起きても最善を尽くすのみ――と言わんばかりに。
だが――その言葉が出る前に、彼は一つのことに気づき口を閉じた。
「――そうだ。和士さんを迎えに行かないと! 今頃びしょ濡れですよ」
「そうね。雲無君、悪いけど彼と連絡を取って迎えに――」
その瞬間。
「雲無! 主任! 緊急出動だ!」
二人が言う通りにずぶ濡れになった和士が、息を切らせて帰って来た。だが、その鬼気迫る表情と発言に、二人はただならぬ事態を感知する。
「どうしたのですか……!? 一体何が!」
「慰霊碑の丘近くの川辺で、女の子が溺れてる! レスキューに連絡はしたが――正直こんな山の中じゃ、間に合う気がしない!」
「なんですって……!?」
「俺と麗が現場に居合わせたんだが、川の流れが強過ぎて手出しが出来なかったんだ! 俺が他のところにも助けを呼んで来るから待ってろとは言ったが……麗のことだ、しびれを切らして無茶なことをやりかねない! 事態が悪化する前に、俺達で手を打たないと……!」
「待ってください! こんな天候でのフライトは危険過ぎます! データが不足している今では
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