第22話 雷雨が呼ぶ試練
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ることも。
「で、でもどうしてわざわざ……」
「さっきも言っただろ、来る時間が出来たから来ただけだ。……遺族でもない奴が弔いに来るのは、生意気だったか?」
「――そんなことはない。麗の夫となるやも知れぬ君の誠意なのだ。ありがたく頂戴する」
「へ……!?」
「お、お、お父さんなに言ってるの!」
――だが、敢えて詮索はしない。先の三二一便事件における彼の対応を見るに、不正や不条理というものを特に嫌う人柄であることは明らかだった。ならば彼の云う「仕事の都合」が不透明であろうと、そこに悪意はないのだろう。
興味津々な様子で娘の想い人を問い詰めるうらら。それを止めようと真っ赤になる麗。いたたまれなくなり、お参りは終わったからと足早に逃げ去る和士。
そんな彼らの一連の様子を見送った後、隼司は神妙な表情で青空を仰ぐ。
(空はこんなにも青いというのに……なんだというんだ、この肌にまとわりつくような歪な湿気は)
そして――息子と同じ違和感を覚えていたことは、知る由もなかったのだった。
◇
一方――その息子自身は。
「……」
両親、そして妹がいるのであろう慰霊碑の丘を見つめ続けていた。最後のフライトを迎える瞬間が刻一刻と迫っているというのに、その表情はどこか遠くを見ているようだった。
「……帰りたい?」
「夏さん」
「いつまでも自分に嘘をついて、平気でいられるほど――人は強い生き物ではないのよ」
「――大丈夫ですよ、僕なら」
その後ろから夏に声をかけられた彼は、普段通りの穏やかな微笑を浮かべ、踵を返して自分の乗機に向かう。フライトに向けての念押しのチェックをするために。
――否。そうすることで、余計なことを考えないために。
(……本当に帰る気がないわけじゃない。ただ、どうしようもないことだからそういうことにして、自分に折り合いを付けようとしている。ワガママを言わない「いい子」だったからこそ、自分の本心に素直になれないのね。それはあの子自身にとって、許されないことなのだから)
彼の苦しみと絶望。そこから這い上がらんと足掻く姿。その全てをそばで見守ってきた夏には、小手先の演技など通じない。
彼女は家族がすぐ近くまで来ている事実から、懸命に目をそらそうとする少年に、再び声を掛ける。
「――あなたの動力強化装置はすでに、度重なる墜落事故のダメージで修復不可なほどに破損してるわ。いつどうなるかわからないカラダだし、着鎧すればあなたの意思とは無関係に装置が作動する以上、着鎧するほどにその確率が跳ね上がるのよ」
「いつものことじゃないですか。全部、覚悟の上ですよ」
「本来、これは六十二号がすでにフェザーシステムとして万全であることを証明するためのフライトよ。六十二号に
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