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フルメタル・アクションヒーローズ
第21話 フェアリー・ユイユイの苦悩
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ケベ監督から解放されたんだもん。……当然のような顔してホテルに連れ込もうとした時には、思いっきりキンタマ蹴り上げてやったし」
「……恐ろしいことをさも当たり前のようにやっちゃう君も大概だよ……」

 自分の下腹部にキュッとした幻痛を感じたプロデューサーは、冷や汗をかきながら担当アイドルの勝気な姿勢に慄いていた。
 そんな彼を尻目に、少女――もとい国民的アイドル「フェアリー・ユイユイ」は、水辺に浮かぶ自分の姿をぼんやりと眺めている。

(……ホントは、芸能界なんて向いてなかったのかなぁ、あたし)

 その胸中には、幼き日に抱いた想いが渦巻いていた。

 ――東京最大の医療機関、天坂総合病院の院長を父に持つ天坂結衣が、アイドルを志したのは四歳の頃。

 幼い少女なら誰もが夢見る、白馬の王子様との結婚。普通なら歳を重ねるに連れて薄れて行く、儚いものであるはずのその夢は――幼少期から美少女としての自覚を持っていた彼女にとっては現実の目標だった。

 自らの愛らしい容姿に自信を持っていた彼女は、謙虚な姉や引っ込み思案の妹とは違い――男勝りと言って差し支えないほどに自己主張の強い人間に成長しつつあったのだ。
 彼女が小学生の頃、三姉妹をアイドルとして迎えたいという有名事務所からのスカウトにただ一人応じた彼女は、瞬く間にトップアイドルへの道を駆け上がり――「フェアリー・ユイユイ」の名声を欲しいままにしてしまう。

 それも全ては「白馬の王子様との出会い」という、幼すぎるほどに純粋な願いゆえの行動だった。誰もが羨むお姫様になれば、きっと王子様が現れる。
 そんな浅はかな理由でも、彼女を突き動かすには十分な原動力だったのだ。

 だが――現実の全てが、彼女のためにあるわけではない。

 素敵な出会い、というものを夢見てトップアイドルへと上り詰めた彼女を待っていたのは、金と権力に塗れた有力者がひしめく、華やかな世界の裏を象徴する「闇」。
 アイドルとして、女としての彼女に触手を伸ばす下衆な男達ばかりが、濁流のように彼女に群がるようになっていた。
 この世界には、王子様も姫を守る騎士もいない。幼いまま肢体だけが豊満になった彼女がそれに気付いたのは、トップアイドルに辿り着いた頃だった。

 ――自分が求めていたものは。本当に自分を大切にしてくれる、守ってくれるような人は、この世界にはいない。大切にしたくなるような人にも、出会えなかった。
 むしろこの世界こそ、自分が求めていたものから最も遠いものだったのではないか。学園のアイドルに留まっていた姉が、普段妹達にも見せないような貌をするほどの「出会い」を果たしていたことが、その疑念を強めていた。

(結友姉はいつもあたし達やクラスメートに頼られる存在だった。だから、自分が寄り掛か
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