第21話 フェアリー・ユイユイの苦悩
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ように山を降りて行った。
(そんな結末……認めるかよ。認めさせるかよ……!)
ある一つの決意を、人知れず胸に秘めて。
「……」
そんな和士の胸中を、知ってか知らずか。雲無は暫し、その背を神妙に見つめていた。
『なんでだよ……どうしてだ! なんだって皆、僕を独りにするんだよ!』
『嫌だ、嫌だ! こんな体も、空も! どうして僕なんだ! 帰りたい、帰りたいよぉ!』
『死にたい……もう、死なせてよ……。頼むよ、連れてってくれよ! あの雲の、ずっと向こうまで! いつまで僕は、僕らは! こんなことを続けなくちゃいけないんだよ! 大人って、そんなに偉いのかよ!』
『死にたくない、死にたくない! 落ちるのも嫌だ、空を飛ぶのもごめんだ! 熱いんだよ! 痛いんだよぉ!』
(……ちっ)
逞しいようで、どこか初々しい背中。かつての自分を思い出せる和士の後ろ姿を見遣る、雲無の脳裏には――かつての自分が、恥も外聞もなく撒き散らした醜態が過っていた。
今更になってそんなものを思い出すのは、心が弱い証。そう決め付け、雲無は自分の弱さに舌打ちする。
(……麗。君は今、どうしている? ちゃんと、平穏無事に暮らしているか? ――いや、ダメだな。こんなことを考えてるのは、未練がある証だ)
そうして、麗と親しいという和士に、妹が今どうしているかを問えなかった雲無は――自分の本心にすら、背を向けていた。
そして、「人」から外れた証となる胸の傷に手を当て、独り空を仰ぐ。
(……?)
その時。
肌に触れる空気の湿度に、雲無は不審なものを感じていた。
予報では、今日は晴れると聞いている。だからこそ以前から決まっていた最終テストフライトの日取りを変えずにいたのだが――自然の暮らしを経て培われた彼の第六感が、ただならぬ警鐘を鳴らしていた……。
◇
――その頃。
真夏の日差しを照り返し、透明な煌きを放つ川に――独りの少女の姿があった。
際どいピンクのビキニを身に付けた彼女は、黒のショートボブと豊かな胸を揺らし、水飛沫を上げてはしゃいでいる。白い肌は陽の光を浴びて、眩い輝きに包まれていた。
だが、彼女は遊んでいるわけではない。一見、川で水遊びに興じているようにしか見えない彼女の行動は、あくまで「撮影」の一環でしかないのだ。
「はいオッケー! ちょっと休憩入ろうか!」
「はーい!」
プロデューサーを務める眼鏡を掛けた痩せ気味の男性が、川で戯れていた彼女に声を掛ける。その呼び掛けに元気よく応えた彼女は、タオルで体を拭きながらスタッフが用意した椅子に腰掛けた。
「いやー、いいねいいね! なんかいつにもまして魅力的だよユイちゃん!」
「まーね。やっとあのス
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