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フルメタル・アクションヒーローズ
第20話 雲無幾望の名を借りて
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を発揮することとなる。
 それは突出した操縦技術でも頭脳でもなく――尋常ならざるタフネスであった。

 元々、雲無の「改造電池人間」のボディはお蔵入りになった最初期型着鎧甲冑を想定して開発されたものだった。
 その身体のまま、最初期型から出力を大幅に削った「救済の先駆者」をベースにした現代の着鎧甲冑を纏えば――彼自身が持つ過剰電力により、着鎧甲冑の人工筋肉が肥大化してしまう。
 その現象はスーツ内に過熱を齎し雲無に苦痛を与えることになるのだが――その肥大化した人工筋肉は、期せずしてクッションの役割を果たすようになっていた。

 多くのテストパイロット達が墜落事故で命を落として行く中。彼だけは、肥大化した己のスーツに守られ、何度墜落しても一命を取り留め続けたのである。
 一度堕ちれば、次などない。そんな摂理さえ無視する彼は、幾度となく墜落事故に巻き込まれながらもその都度生き残り、文字通りの「体当たり」で試行錯誤を繰り返した。

 そして遂に――フェザーシステムの完成形、六十二号こと「至高の超飛龍」のOS開発に辿り着いたのである。

「そんな、ことが……」
「――こうならざるを、得なかったのです。元々は動力強化装置を体内に仕込んでいるだけで、後は生身の人間だったあの子ですが……度重なる墜落事故で欠損した肉体を補うための改造手術を経た今では、もう生身の部分は四割も残っていない……」
「……あって、いいのかよ。そんなこと……!」
「いいも悪いも、ありません。あの子には、そうする以外に道はなかったのです。……もう、あの子が家族の元に帰ることはないでしょう。ならば――少しでも生きている限りの願いをと、この道に誘うことになりましたが……それすらも結局は、あの子を利用するだけの結果にしかなり得なかったのかも知れません」
「……」

 一通り語り尽くした夏は、操縦席に腰掛ける和士を見上げ、ふっ……と微笑む。

「けれど、それもようやく終わる。この計画が完了すれば、あの子には再び西条家での平穏な暮らしが待っている。――だから、引き受けてくださったあなたには、本当に感謝しているのですよ。傷つくだけのあの子の運命を、終わらせてくださるのですから」
「……俺は、やりたいようにやってるだけさ」
「そうですね。でも、望んでこの道に来たあなたの背は、ここに来るしかなかったあの子には輝いて見えたことでしょう」
「妬ましいとは思わないのか? 俺はあんた達が積み上げてきた功績を、いいとこ取りしてかっ攫おうってんだぞ」
「確かにそうかも知れません。でも、あの子は初めからそんなものは望んではいなかった。この仕事を引き受けてくれる人がいたことの方が、大事なのですよ」
「……そういうものかな」

 機体に背を預け、和士は滑走路の向こうに広がる大自然を
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