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フルメタル・アクションヒーローズ
第19話 改造電池人間の闇
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その犠牲者を悼む慰霊碑が、この近くに在るのです。彼はその日のテストフライトを終えたら、ほぼ毎日欠かさずそこまで足を運んでいるんですよ」

 麗の兄を奪った、最悪の事故。
 その話題を出された和士は、神妙な表情で相槌を打つ。だが、西条の口ぶりに不審なものを感じた和士は、思わず聞き返した。

「……ほぼ?」
「年に一度。事故が起きた日に、遺族の方々が列を成して慰霊碑に来られるのです。その日だけ、彼はお参りを避けています」
「なぜ避ける必要が? 亡くなった人を悼む気持ちが同じなら、遠慮することなんて――」

「――会ってはならない人が、来るから、ですよ。自分の遺族に会うわけにはいかない、というのが彼の考えですから」

「……、は?」

 変な声が出てしまった。

 今、彼女は何と口にした? 自分の遺族?
 どういう意味なのか、さっぱりわからない。まるで雲無を幽霊扱いするかのような彼女の物言いに、和士は思わず身を乗り出してしまった。

「……なん、なんですか、それ。どういう意味ですか」
「言葉通りですよ。彼は一度……少なくとも、戸籍上は死んだ人間なのです。自分が生きていると知らない家族に会えない――いえ、会ってはいけない理由が、彼にはあるんです」
「な、なんだって……! じゃ、あいつは……!」
「ええ。十一年前の墜落事故の、ただ一人の生き残りです」

 ショックのあまり、操縦席から転げ落ちそうになる。落ちたら怪我をする、という本能の命令に体を支えられたまま、和士は西条を凝視した。

「ちょっと待て……十一年前の事故を生き延びて、今が十六歳って……ま、まさか!」
「――さすが、ヒルフェン・アカデミーの首席ですわ。その察しの良さ、イッチーさんにも見習って頂きたいものです」

 齎された情報から辿り着いた仮説。西条の反応が、それが正解であることを裏付けていた。判明してしまった事実に驚愕する余り、和士は操縦席に身体を預けるようにへたり込んでしまう。間抜けなあだ名を口にする、西条の呟きに反応する気力もない。

「あいつが……麗の、死んだ兄貴……!?」

 橘花家の長男、橘花隼人。
 五歳の時にサッカーチームの応援のため、SP同伴の上で飛行機に乗り――事故に巻き込まれ命を絶たれた。破片に抉られた胸の肉だけが、遺体として発見されている。
 ――そう、世間には公表されていた。

 その橘花隼人が生きていた上に、こんな地獄のような飛行場で新型レスキューシステムのテストパイロットになっているなどと、どうして想像出来よう。

(こんなこと……麗に会ったとして、なんて説明したらいいんだ……!)

 兄のためにあれほど気丈に生きてきた彼女が、兄の存命なんて知ったら卒倒では済まないのではないか。恐らくは彼女だけでは
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