第17話 屋久島の夏
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そのハッチを開いてしまった。
そこから飛び出したパイロットは、体を大の字にしたまま地表目掛けて落下していく。だが――その背には、パラシュートらしきものは見当たらない。
(……!)
だが、和士が驚愕したのはそこではない。――似ているのだ。そのパイロットの、容姿が。
「救済の超水龍」の、「基本形態」に。
それが意味することに和士の理解が、ようやく追い付いた頃には――すでに彼の周囲を、飛行機から投下された増加装甲が囲んでいた。
ライトグリーンに塗られた増加装甲は、赤いヒーロースーツを纏うパイロットの全身に、引き寄せられるように張り付いて行く。やがて彼の全身は、ウイング状のバックパックを搭載した装甲に固められてしまうのだった。
『Sailingup!! FalconForm!!』
その状態が完成した時。和士の耳に、聞き覚えのある電子音声が届く。すると――増加装甲を身に付けたパイロットは、自由自在に飛べる自分を見せ付けるかのように、縦横無尽に飛び回り――和士に視線を定めた。
「……ッ!」
自分の存在に気づいていると察した和士は、思わず息を飲むが――パイロットがウイングのジェットを噴かし、急降下を開始するのはそれよりも速い。
(なっ……んて、加速ッ!?)
そして――あわや地面に激突か、というところで体勢を反転し、逆噴射で減速した彼は、川を二手に分けている岩の上にふわりと降り立った。
まさに、減速が間に合うか間に合わないかのギリギリ。そんなところを攻められるほどの確かな技量が、その一瞬で証明されていた。
(ダイバーシステムに、コンセプトは似ている……似ているが……速さが、まるで桁違いだ。しかも……)
見上げれば、操縦士を失ったはずの飛行機が何処かへと飛び去って行く光景が伺えた。自動操縦機能という「超水龍の方舟」との大きな違いが、現象として表れている。
(バディ体制のダイバーシステムと違い、単独での活動が可能、ということなのか)
単なる発展型とは言い難いレベルの技術力を目の当たりにして、和士は暑さとは異なる要因による汗を、顎から滴らせた。
その性能をいきなり見せ付けられた彼が、視線を戻した時――パイロットの顔を覆っていたマスクが、蓋を開けるように解除される。
「……?」
焦げ茶色の髪に、意思の強そうな瞳。どこかデジャヴを感じさせる顔立ちの彼は――和士と視線を交わすと、穏やかに微笑んで見せた。
(なんだあいつ……ほとんど俺と同い年くらいじゃないのか? いや、それより……あいつ、どこかで見たよう、な……?)
「――新任隊長の伊葉和士さん、ですね。僕は救芽井エレクトロニクス第一実験飛行小隊所属、|雲無幾望《くもな
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