暁 〜小説投稿サイト〜
フルメタル・アクションヒーローズ
第17話 屋久島の夏
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が眠っているという山中を射抜いていた。

(……このフェザーシステムのために戦ってきた人々のためにも。この力を必要とするであろう人々のためにも。俺は、なんとしてもやり遂げなきゃならない。もう、二の足を踏んで後悔するのはゴメンだ……!)

 そう胸中で嘯く彼は、滴る汗をそのままに拳を握り締める。

(――それにしても……どんな人なんだろうな。実験小隊の、最後の生き残りって……)

 仲間達を失いながらも単身フライトを断行し、完成形の開発に大きく貢献したという――実験小隊最後のテストパイロットに、思いを馳せながら。




 科学技術が著しく発展し、今や人々の生活の大半を機械が支えているこの現代に至ってもなお――この屋久島の森林は長い年月の積み重ねが成せる自然の豊かさを、保ち続けていた。
 鬱蒼と生い茂る林、穏やかな川のせせらぎ。風に揺れる葉の音、日差しを覆い隠す木陰。そのひとつひとつに宿る命の息吹が風となり、道無き道を歩む和士の頬を撫でる。
 ヒルフェン・アカデミーという最新鋭の機械に囲まれた生活の中にいた彼だからこそ――その感覚をより鋭敏に感じているのだろう。かつて経験したことのない空気の匂いに戸惑いながらも……その表情は、どことなく安らいでいるようでもあった。

(いい場所だ……。休暇を貰えたら、いつか麗も誘って――)

 だが、その表情はそこまで思考が回ったところで、再び険しい色に変わってしまう。

(――いや。ここはあの子の兄が、十一年前に亡くなった場所でもあるんだ。残念だが、バカンスに誘える場所じゃないな)

 ほんの一瞬とはいえ、浅はかな考えを抱いてしまったことに罪悪感を覚えつつ、和士は木陰から覗く眩い青空を見上げた。日差しを遮る木の葉が、新緑の光を煌々と放っている。

(それにしても……かつて航空機の墜落事故が起きたこの地で、飛行システムの研究――か。あまりの危険性ゆえにプロジェクト自体も公に出来ず、飛行場も取れないからと言って、なにもこんな場所に……ん?)

 ――ふと、不自然な音が和士の聴覚に響いてきた。大自然に囲まれた、この穏やかな山中だからこそ際立つ、その無機質な音は――凄まじい勢いで、こちらに近づいてきている。
 鋭い刃で、風を切る。そんな言葉を連想させるこの音を身近に感じ取り、和士はハッと顔を上げた。

「――!」

 刹那。少年の視界に広がる青空の景色を、一つの物体が瞬く間に横切って行った。その正体を追い求め、視線で追いかける和士の瞳には――ライトグリーンとレッドで塗装された、一機の飛行機が映されている。

(なんだ、あれは……!? まさか、あの小型飛行機が……ッ!?)

 和士の思考が眼前の状況に追い付くよりも早く――突如現れた飛行機は、大きく舞い上がると……
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