第2章 着鎧甲冑ドラッヘンフェザー
第16話 父へ、母へ、妹へ
[2/2]
[8]前話 [9]前 最初 [2]次話
、微かでも少年が生きている証だったのだ。
「こ、これはなんという……」
「……やはり、これでは助かる見込みは……」
「いや……ある! あるはずだ! このような幼子の未来を閉ざすなど、あってはならんことだ!」
「しかし……!」
「西条君、動力強化装置、まだ車に残っているな? あれと人工血液のストックを持って来さない、この場で手術する!」
「な、なんですって!? 無謀です博士! 動力強化装置と付属の人工臓器で、破損した内臓を補強しようというのでしょうが……そのサイズは成人男性を想定したものなんですよ!? それに子供の体力で手術に耐え切れるはずがない!」
「この子の体格に合わせて私が自力で改修する! つべこべ言わずに私に従え、一刻を争うのだ!」
激しい口論の果てに、男達の一人はやむなしと言いたげな表情でその場を走り去って行く。――その間。
少年は、残されたもう一人の男と視線を交わしていた。言葉を交わせる状況ではないが――これから起きることは、なんとなく理解していた。
(僕、どうなるんだろう……このまま、死――)
「――死なせは、しない。この救芽井甲侍郎の、名にかけて」
だが、意識はそこで途絶えてしまった。男の力強い宣言が、その耳に届くこともなく。
――この日。二○二二年、八月。
屋久島山中で発生した航空機事故で、乗客乗員合わせた五百名が死亡した。未曾有の大事故の犠牲となった人々の中には、当時五歳だった警視総監の長男、橘花隼人も含まれていた。
彼の遺体はほとんど残っておらず――破片によって大きく抉り取られた胸の肉片から、身元が特定されたという。
[8]前話 [9]前 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ