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フルメタル・アクションヒーローズ
第13話 願いは一つ、蒼い海
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ら、暗い海面を静かに覗き込んでいた。

「お嬢様……? いかがされましたか?」
「ここも危険です、お急ぎください!」

 その様子を見やる救助隊員達に急かされても、彼女はまるで足に根が生えたかのように、その場に留まり続けていた。
 ――まるで。何か大切なものを、忘れてきたかのように。







 その頃。

 現場から、遠く離れた海面に。「超水龍の方舟」の船体が、静かに漂っている。その上部ハッチの上に立ち、夜空を仰いで佇む少年が一人。

「……海原……」

 三二一便と引き離されて行くように、水底へと消えていった親友の名を、静かに呟いていた。弱々しく、消え入りそうなその声には――耐え難い悲しみと苦しみの色が滲んでいる。

 ――あの時。水流ジェットの推力を使い果たし、沈みゆく「救済の超水龍」を救助すべく、和士は「超水龍の方舟」を急発進させた。
 しかし、「潜行形態」の総重量は二百キロをゆうに超える。そのスーツが沈む速さも尋常ではない上、三二一便の機体が急速に海面まで押し上げられたことで発生した波が、和士の意に反するように方舟の行く手を遮ったのだ。

 結果、波が収まり方舟がその機動性を取り戻した頃には――すでに「救済の超水龍」は、レーダーの反応から消失していたのだった。

 それでも探そうとあがき続けた結果、帰りの燃料も失った彼は――結局こうして、親友を見つけられないまま、海の上へ浮上することになったのである。

 この約一年、いつも隣にいて当然だったはずの彼を失って――少年は、この事件が始まる少し前にあった出来事を思い出す。

 今にして思えばくだらない理由で、あの少女の純粋な想いを踏みにじってしまった――と。

(……会わせてやれば良かった……! 常識的な振る舞いがどうとかなんて、どうでもいいのに!)

 そうして、身動き一つ取れないまま海上に漂う彼の目に、数多のライトに照らされた三二一便が映る。その輝きに包まれながら、救助船に乗り込んで行く乗客達の中には――麗の姿もあった。

(麗……すまない、俺は、俺は……!)

 大切なものを守れる、強く優しいレスキューヒーロー。そうなってほしい、そうであってほしいと自分に願っていた彼女を、大きく裏切る結末だった。

 伊葉和士は、海原凪を――見殺しにしたのだから。

「海原っ……海原ぁっ……!」

 その罪の重さに潰れ、吐き出すかのように。蒼い船体に両手をついた彼は、泣縋るような表情で月を見上げる。

「……凪ぅぅぅうぅッ!」

 ――まるで。
 その向こうへと旅立つ彼に、行くなと訴えているかのように。






『……ったくよぉ。帰りのことなんてまるで考えねぇ無茶苦茶ばっかりしやがってよ。よく
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