第12話 伊葉和士の戦い
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それから、僅か数分。
彼らの眼前に――小さく。
真っ黒な異物の影が現れた。
『和士くん、間違いねぇだ! 三二一便だべ!』
「やった……見つけた! 見つけたぞ海原! 俺達やったんだ!」
視認しにくくはある――が、そのシルエットは紛れもなく飛行機。そして、影の大きさはまさしく――ジャンボ機のそれであった。
賭けに勝ったことを確信し、和士達は歓喜の声を上げた。機体は水上に漂っている状態である上、原型もしっかり保たれている。
奇跡的に着水に成功したのだろう。コクピットに積まれた生体反応レーダーでは、無数の点が機体の位置で光を放っていた。
『和士くん!』
「ああっ!」
和士はすかさずこの情報を救芽井エレクトロニクス日本支社と、アメリカ本社へと送信。次いで、現在出動している捜索隊にもシェアした。
――情報は回った。この場に救助が駆けつけてくるのも、時間の問題だ。
(よかった……麗、本当に……!)
そこまでの処置を終えたところで。和士は緊張の糸がほどけたように肩を落とし――その頬を、安堵の涙で濡らす。
そんな親友の様子を、息遣いで察した凪は、何も言わずモニターの電源を切る。男の涙など、人に見せるものではないからだ。
(……ま、これで一件落着だべな。あとは、おら一人で罰さ被れるように、うまく理事長先生に説明しねと……)
自分の出番がないままに終わりそうなことに胸を撫で下ろしつつ。凪は頭の後ろに手を組み、海上を漂う機体を静かに見守っていた――が。
(……ん?)
その目が。機体の最後方――尾翼付近に留まる。彼の目には――機体が、そこから徐々に傾き始めているように見えていたのだ。
(――波で機体を揺らされて、機体の自重が掛かる場所が一箇所に集まってるだか!?)
今現在、三二一便の機体は水平に海上に乗ることで自重を分散させ、浮力により今の体勢を維持している。
もし、何らかのはずみ――例えば波で――この体勢が崩れ。大勢の乗員乗客を乗せたジャンボ機の重みが、機体のどこかに集中するようなことがあれば……。
『まずいだ和士くん! このままじゃ……!』
「えっ――!」
それに勘付いた凪が、声を荒げ。聞きなれない親友の声色に、和士か思わず顔を上げた瞬間。状況が――動いた。
それまで水平に漂った状態を維持していたはずの機体は――まるで、引き摺り込まれるかのように。
機体後方から、海中に沈み始めたのだ。
刹那――離れていても伝わるほどの悲鳴と絶叫の嵐が、水の波紋を通じて「超水龍の方舟」まで響いてくる。
「そ、そんなッ!?」
凄惨な叫びに突き動かされるように、和士は目を剥き眼前の光景に驚愕する。ゆらゆらと水面を漂っていたはずの
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