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フルメタル・アクションヒーローズ
第12話 伊葉和士の戦い
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でかわしながら――潜水艇は蒼き水龍が如く、海中の闇を縫うように突き進む。

 その巧みな操縦技術により、岩礁地帯を切り抜けたのは……最初の回避行動に入ってから、僅か三十秒後のことだった。

『やったべ和士くん!』
「……ヌカ喜びしてる暇はないぞ、海原。三二一便が連絡を絶ったポイントにはもう着いてるってのに――機体の影も形もない!」

 すでにコクピットに搭載された電子マップには、三二一便の予定航路がインプットされている。和士はそのルートを辿りながら、音波探知レーダーで異物――すなわち機体を捜索していた。

(やはり連絡が付かなくなってから、すぐに墜落したわけじゃないみたいだ。不味いぞ……あまりにも予定航路から離れ過ぎたところにまで行かれていたら、探しようがない!)

 広大な太平洋の中からジャンボ機一つを探し出すなど、本来なら砂漠から砂金一粒を見付け出すようなもの。本来その機体が通過するはずだった予定航路という手掛かりが使い物にならなければ、そもそも捜索自体が不可能になる。
 仮に見つかったとしても、その頃には……。

(……挫けるな。泣くな。諦めるな! まだ俺達は、何も守れちゃいないんだぞ!)

 思考を断ち切らんと、和士は強く左右に頭を振る。操縦桿を握る手がわなわなと震えても――動揺に、瞳が揺れても。心の最後の一線は、戦い続けている。

 ほんのわずかな兆候も見逃すまいと、彼はレーダーを凝視する。瞬きする間も惜しみ、滴る汗を拭うこともなく、ただ真っ直ぐに。

 その戦いが――二十分に渡り続いた時。

「……!?」

 ――和士の目が、違和感を捉えた。

 レーダーに映る、微弱な波。その蠢きは、何もない海中を進み続けてきた「超水龍の方舟」に確かな「兆候」を見せている。
 この静寂を打ち破る、「兆候」を。

(これは……!)

 明らかに不自然な反応を示す、そのレーダーに和士の目線が釘付けにされる。電子地図によれば、その方向は数十キロに渡って何もない水平線が広がるのみであり、レーダーに反応するような異物は一つもないはずなのだ。
 あるはずのない場所に、ないはずの反応がある。例えそれが、微弱なものであっても――賭ける理由としては十分であった。

「海原! 十時の方向に反応があるぞ! 機体が不時着した跡かも知れん!」
『ほんとだか!? すぐ向かってくんろ!』
「ああ!」

 墜落という可能性は、敢えて考えず。不時着と言い切り、和士は操縦桿を左に切る。大きく唸りを上げる流線型の船体は、その意思に沿うように水を切り、進路を変えていく。

 ――そして。微かな希望を託し、三二一便の航路から大きく離れた地点へと。
 二人は、迷うことなく突き進んでいく。

「……! あ、あぁ……!」

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