第11話 本当の名誉
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長室を出た二人が、自室近くの廊下に出たところで。凪は和士の手を振りほどくと、眉を潜めてルームメイトの肩を揺さぶった。
「和士くん! このままじゃ麗ちゃんが危ねぇって、言ってたじゃねぇべか! なして顔さ背けるだ!?」
「……俺達は、ヒーローとしての名誉を勝ち取るために、ここまでやって来たんだ。その全てを、無駄にはできない」
「だども!」
「海原。お前だって、村の仲間達を救う名誉を欲してここに来たんだろう? だったら……応えてやれよ。村の期待に……」
肩を掴む親友の手に、掌を乗せる和士。その手が震えていることに気づいた凪は、彼の胸中に渦巻く葛藤を悟る。
――見捨てたくなど、ない。それどころか事件を知った瞬間、いの一番に動き出したのは和士だった。
だが……助けに行くことは久水茂に逆らうということであり。それは、アカデミーを退学するということに繋がる。
それは、父の名誉を取り戻すために戦ってきた和士にとって、絶対にあってはならない結末なのだ。しかも、故郷の命運を背負っている親友の人生まで狂わせてしまう。
ならば――例え、望み薄であろうと。アメリカ側から始まっている捜索の成果に、賭けるしかない。追い求めてきた栄光を、手放さないためにも。
「……」
そう思い詰めながら、凪の言い分を否定することもできず。和士は真摯な眼差しから目を背け、悲痛な面持ちで明後日の方向を見ていた。
そんな彼の痛々しい姿を目の当たりにした凪は――肩から手を離すと。暫し、神妙な面持ちのまま、親友の様子を見つめていた。
「……やっぱ和士くん、嘘つきだべ。本当にそう思ってるなら、そんな顔してるはずがねぇだ」
「……」
「なぁ、和士くん。名誉名誉って、いつも言ってるけども。その名誉って、誰のためのもんだか?」
「え……」
やがて開かれた凪の口から、語られた言葉。その意味を思案し、和士は顔を上げる。
責めるわけでも慰めるわけでもない。ただ静かに――それでいて、反論を許さぬほどに強く。凪の眼差しが、迷いに囚われた和士の瞳を射抜いていた。
「お父さんのため? そうやって勝ち取った名誉を、和士くんは……胸張って誇れるだか?」
「そ、それは……」
「確かにおらは村のためにアカデミーさ来ただ。だども、おっ父からは自分に胸を晴れる生き方をしろ、とも言われてるべ。――おらは、おら自身に誇れるものが『名誉』だと思ってるだ。自分にすら誇れないものを、人に見せびらかせるわけがねぇべ」
「……!」
凪の言葉に、胸中に潜む矛盾を暴かれ――和士は目を剥き、彼の眼差しと向き合う。まるで助けを求めているかのような、その瞳を見つめ。凪は、言葉を紡いで行く。
「だから、おらは助けに行きたい。例え、それが悪いことなんだとしても。
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