第10話 美女と田舎っぺ
[3/7]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
ニクス日本支社で、現役のヒーロー達の下で研修を受けている。僅か数ヶ月で飛躍的に実力を伸ばしていた彼は、本来なら卒業後に受けられるはずの待遇をすでに勝ち取っているのだ。ナンバー2である和士は、未だにアカデミーから出られずにいるというのに。
その現状は絶え間無く、取り残された和士の胸中を締め付けている。
(……ダメだ、こんな暗い気持ちのままでいては。そうだ、せっかくもうすぐ年末休暇なんだ。みなも村にこっそり行って、御歳暮を送りつけてやろう。きっと驚くぞ、あいつ)
そこから、無理矢理にでも抜け出そうとして。席を立った和士は校内を歩く生徒達を一瞥すると、本棚の方へと足を運ぶ。日本地図が記されている書類が置かれた棚で足を止めた彼は、今年度の冊子に手を伸ばした。
仰天してひっくり返る親友の姿を想像し、頬を緩めながら。
(夏季休暇の時にお中元でも送ってやろうとして、みなも村の住所を聞いたら、あいつにはぐらかされたんだよなぁ。郵便も届かないド田舎だから……って。だったら、こっちで調べ上げて直接持って行けばいい)
ページをめくり、みなも村を探す和士。その胸に期待を膨らませる彼は、彼が生まれた地である場所を指先でなぞり――徐々に、その表情を曇らせて行く。
(え……?)
――ない。見つからない。本人から聞いた話では、その辺りで間違いないのに。
凪は、つまらないウソをつくような男ではない。いや、彼はつまらないウソすらつけない。ならば、この地図がおかしいのか。
半信半疑のまま、和士は手にしていた冊子を元の棚に戻すと、その隣に置かれていた前年度の日本地図を手に取った。
そしてページを開き――同じ地点を探すと。「みなも村」という場所は、すぐに見つかった。
東北地方の端の端。他の人里から遠く離れたその村を見付けることは、思いの外容易かった。
(……なんだよ、ちゃんとあるじゃないか)
胸を撫で下ろした和士は満足げに冊子を戻し、ため息をつく。どうやら、今年度分だけ誤植があったようだ。確かにこんな小さな村、見落とされていても不思議ではない……のかも知れない。
……だが。
(――妙、だな)
和士の心には、微かな違和感が残されている。彼は念のためにと、他の年度の冊子も確認したのだが……その全てに、「みなも村」は正確に記載されていたのだ。
昨年から十年前まで、一度も欠かされることなく。なのに。
――今年度「だけ」、みなも村は地図から姿を消しているのだ。
(今までずっと記載されてきたのに、今年だけ忘れられるなんて……)
そんなこと、あるのだろうか――と、和士は訝しむ。
――すると。
『Aクラス、伊葉和士。面会希望者が来られた。直ちに応接室に来るように』
「…
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]
しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ