第9話 頼りなくて頼れる相棒
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警視総監の娘を襲った、アカデミーが始まって早々の不祥事。二名の退学者を出した、その事件の翌朝。
改めて視察を終えた橘花麗は、本島に向けた帰路に立とうとしていた。
「全く……大変な目に遭ったわ。今後はG型の護衛を大勢付けて来るようにしないと」
「すまなかった。君を保護しきれなかったのは、アカデミーの人間である俺達の落ち度――って、『今後』?」
「ええ、今後よ」
アカデミー門前にて、彼女を見送ろうとしていた和士は、その言葉に目を丸くする。あのような辱めを受けた彼女が、もう一度アカデミーに来るとは思えなかったからだ。
そんな彼の反応を予測していたのか、麗はフンと鼻を鳴らしてそっぽを向く。その白い頬は、微かに桃色を帯びているようだった。
「勘違いはしないで。G型専門の学科を創設させるまでは諦められないっていうだけよ」
「あ、ああ、そうか」
「……まぁ。今のアカデミーにも、気概のあるヒーロー候補生はいるらしいし。今回の件の公表は、しないであげる。今アカデミーが潰れても、誰も得しないもの」
「……」
この一件が外部に知られていれば、アカデミーは元より、救芽井エレクトロニクスにも責任が及んでいただろう。それで着鎧甲冑の生産ラインに支障が生じれば、G型専門の学科どころではなくなってしまう。
自分に対する好意もあるとは知る由もない和士は、彼女がそのためだけに告発を取り止めたのだと判断し――彼女の思慮深さに感服していた。
亡き兄の無念のために、そこまで戦えるのか、と。
「……凄いな。そこまで頑張れるなんて」
「べ、別に。私はただ、R型なんて信用できないだけよ!」
「おいおい、俺達を助けたのもR型だったろうが」
「あの新型が? あんな速度で落下して着鎧甲冑に激突しても、傷一つ付かない強度を持っているのに、対人用じゃないだなんて……」
――「救済の超水龍」の「基本形態」である、蒼いヒーロースーツ。あのスーツの強度は、かの「救済の超機龍」にも匹敵する耐久性を保持しているという。
「救済の超機龍」の装着者は、その性能と自らの格闘能力にものを言わせ、着鎧甲冑の悪用を目論んだ勢力を悉く拳で打ち倒してきたと言われている。
だが、「救済の超機龍」も「救済の超水龍」も、決して戦うためだけに生まれた力ではない。
「それが、本来あるべき姿なんだよ。着鎧甲冑は」
「……ま、いいわ。じきに父さんと私で、G型の性能も底上げさせて見せるんだから。見てなさい、伊葉和士」
そう言い切ってみせる和士を一瞥し、麗は踵を返す。その頬を、微かに緩ませて。
「……R型、か。確かに、あれはちょっと……かっこよかったかも、ね」
使用人が用意した黒塗りの高級車に乗り込む寸前。見送る和士の方へと振り返った彼女は、本人
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