第9話 頼りなくて頼れる相棒
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に聞かれないように、そう呟いた。
例え生身でも、得物を持たなくても。体一つで危機に立ち向かう、あの勇姿を思い浮かべて。
「さて、と」
やがて本島に向けて走り去る車が、見えなくなった後。踵を返した和士は――校舎内で、半べそをかきながら壊れた壁を修理している凪を見つめた。
先日。
起動実験を始めて早々、事件を聞き付けた彼は久水茂の制止も聞かず、足早に捜索を始めたのだが――「救済の超水龍」のパワーを制御し切れず「基本形態」のまま、アカデミー中をあちこち跳ね回り、和士達のところに墜落するまで様々な場所を破壊していたらしい。
幸いそれによる怪我人は出なかったようだが、当事者の凪が責任を持って、壊した壁や施設の修理に奔走することになったのである。
――確かに、今回における彼の行動は単なる暴走に他ならない。だが結果的に、それによってアカデミーの秩序が守られたことも事実だった。
彼が事件を解決しようと動き出していなかったら、今頃は和士は再起不能になるまで痛め付けられ、麗は純潔を穢されていたかもしれない。久水茂もそれを鑑みているからこそ、修理作業という罰で済ましているのだろう。
(やれやれ。教官に見つからないように、ちょっと手伝ってやるか。バディの失敗は、バディの責任だからな)
類を見ないほど強く優しく、ポンコツな相棒。そんな彼の泣き顔を、苦笑混じりに見やりながら。
少年は袖を捲り上げ、壊れた壁に近づいて行くのだった。
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