第8話 正義の鉄槌?
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」
そして――麗の悲痛な制止に、耳を貸すこともなく。その身を弾丸のように撃ち出し、彼は勝ち目のない戦いへと飛び込んで行く。
効率的とは程遠く、海外の大学を卒業した秀才にあるまじき行い。その無謀窮まりない姿は、あの日垣間見た親友の「勇気」を追い掛けているようだった。
――が。
「わぁあぁあぁあ!」
この緊迫した一瞬をぶち壊すような、間抜けな悲鳴が響き渡り――和士の目が点になる。
「へ」
そんな彼が、思わず腑抜けた声を漏らしてしまった瞬間。同じく何事かと歩みを止めた倉知の頭上に――青い物体が激突した。
悲鳴を上げる暇もなく、人の形をしたその物体の尻に押し潰された倉知は、瞬く間に意識を失い――着鎧を解除されてしまう。
「いったたた……! すげぇ性能だべな、これ。訓練用とは全然違うべ」
「海原……!」
青い物体――否、口元をシールドで防護している蒼いヒーロースーツ「救済の超水龍」を纏う彼の、聞き慣れたその声色に触れ、和士は思わず声を上げてしまった。
ほとんどの着鎧甲冑は人工呼吸を円滑に行うため、マスクの口元部分を唇型に設計してある。だが、この「救済の超水龍」は水中活動を意識して設計された特別製であり、口元は水の抵抗を左右に流すためのシールドで覆われている。
久水茂からその資料を渡されていた和士は、彼の声と蒼いカラーリング、そしてその外見的特徴から瞬時に凪だと判断することが出来たのだ。
……訓練中に、暴走してここまで吹っ飛んできたしまった、ということも。
(大方、訓練用「救済の龍勇者」との性能差に対応出来ず、勢い余ってここまで跳んできたってところだろう。パワーだけなら、かの「救済の超機龍」にも迫るポテンシャルと書いてあったし……はぁ……)
そんな大変な代物を預かるルームメイトの、その能力に見合わない間抜けな姿にため息をつく。俺の決死の覚悟を返せ、と愚痴るように。
「ひ、ひぃぃいい!」
「こ、この着鎧甲冑は……!?」
だが、その口元は安堵に緩んでもいた。(事故とはいえ)一瞬で倉知を無力化してしまった謎の着鎧甲冑の出現に、間山は尻餅をついて怯え切っている。もう、彼らに逃げ場はない。
麗もその見慣れぬ着鎧甲冑の登場に、驚愕しているようだった。
思わぬ形で勝利をもぎ取ってしまった和士は苦笑を浮かべ、未だに状況が見えず左右を見渡している凪を見遣る。
「あれ? 和士くん? おっかしいべ、おらぁ、ついさっきまで校舎中央の訓練場にいたはずなんだども……」
「……はは、助かったよ。ありがとな、海原」
そして、尻餅をついたまま辺りをキョロキョロしている彼に、困ったような笑顔を浮かべ――その手を差し伸べるのだった。
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