第7話 緊急事態
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次に会う機会があったとして、自分はどう対応すればいいのだろう――。そう思い悩んでいた時だった。
『緊急事態発生、緊急事態発生。二台の訓練用着鎧甲冑が、何者かによって盗難された。全校生徒は、至急捜索に掛かれ!』
この部屋だけでなく、アカデミー中に流された警報の内容に、和士は思わず顔を上げて思考を停止させる。
「盗難だと!?」
焦燥を露わに、ハンガーに掛けてあった制服の上着を羽織ると。彼は弾かれたように部屋から飛び出し、慌ただしく駆け回る生徒達を目撃する。
「我々Bクラスは校庭周辺を見る! CクラスとDクラスで、全校舎を回れ!」
「くそ、何がどうなってんだ!」
「Eクラスは外周を見張れ! もし外部に持ち逃げでもされたら、アカデミー始まって以来の大不祥事だ!」
「そ、そんなことになったら卒業できても、ヒーローとして雇ってもらえないかも知れないじゃないか! な、なんとしても探し出せえぇえ!」
彼らは戸惑いの声を上げながらも、懸命に捜索を開始している。この一件の結末に自分達の将来が懸かっているのだから、そうなるのも当然なのだが。
和士はようやく状況を飲み込むと、冷静さを取り戻すべく息を飲み込む。そして毒気を抜くように吐き出すと、近場にいたBクラスの指導者に声をかけた。
「おい、Aクラスはどこを捜索している?」
「い、伊葉和士!? Aクラスなら、事務ビルの方に向かっているが……」
「そうか……。一応、校内全域に人手は回っているらしいな。Aクラスの連中が俺を探していたら、Eクラスに加勢していると伝えてくれ。あいつらだけでは当てにならん」
「お、おい!?」
それだけ言い残すと、和士はBクラスの制止も聞かず走り出して行く。彼の迷いのない素早い動きに、Bクラスの指導者は引き留める暇すら与えられなかった。
(……もし、この捜索体制に穴があるとすれば、それは落ちこぼれ共が配置されている外周付近だ。じきに校内の警備を任されているG型の勤務員が動くだろうが――大人しくそれを待っているわけには行かない)
思考を巡らせながらも、和士は足を止めることなく広大な敷地を駆け抜けて行く。あれこれと悩んで立ち止まるより、ひた走る方が未来を変えられるかも知れないからだ。人命を預かる、大切な着鎧甲冑が盗み出される、という未来を。
――身を以てそれを教えた、あの背中を思い返しながら。和士は、資材の山や花壇を飛び越え、がむしゃらに走る。
「……なぁ、いいのか本当に。倉知さんと間山さん、ガチでヤっちまう気だぜ」
やがて、海原を一望できる外周まで来た時。制服を着崩した格好で、見張りとは思えない雰囲気でうろついている同期達を見つけた和士は――怒鳴りつけそうな衝動を抑え、背後から聞き耳を立てる。
元々
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