暁 〜小説投稿サイト〜
フルメタル・アクションヒーローズ
第5話 ダイバーシステムの胎動
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できれば、「東北出身の一期生」という触れ込みで、日本中にみなも村の存在を知らしめることができる。
 村の存亡を救うには、またとないチャンスだったのだ。

「――っていうことだべ。いやぁ、勉強した甲斐があっただなぁ」
「村を救うための名誉、か……」

 故郷に生きる人々の未来のため、アカデミー入学を決めた凪。その言葉を聞き、和士は視線を落とす。
 痛感したのだ。「名誉」が理由であるという点は共通していても、父の汚名を返上するためだけに、アカデミーに入ってきた自分とは背負っているものが違うのだと。

「和士くんこそ、お父さんのためだなんて立派じゃねえべか」
「別に……ただ、正しいことのために戦った父さんが、悪者扱いされてることに我慢ならなかっただけだ」
「――そういうのが、きっと大切なんだべ。助けたい、家族がいるっていうのが……」
「……?」

 その時。いつも能天気に「にへら」と笑っている凪が、ふと見せた切なげな表情に、和士はえもいわれぬ違和感を覚えていた。
 彼が零した言葉には、どういう意味があるのか。それを問うべく、和士が口を開いた瞬間――

『Aクラス、海原凪候補生。伊葉和士候補生。至急、理事長室に出頭せよ』
「……んっ? おら?」
「理事長室だと……?」

 ――自分達の名が校内放送でアナウンスされたことに、二人は顔を見合わせる。次いで、何事かと訝しみながら席を立った。

「なぁ、ほんとなのか? 今日、警視総監の息女が視察に来るって話……」
「マジらしいぜ……参ったなァ。そのお姫様、なんでもかなりのG型優先派で、R型専門のアカデミーを嫌ってるって噂なんだぜ。何言われるかわかったもんじゃ――ん? おい、あいつら……」
「見ろよ、首席と次席だぜ」
「あの二人が揃って呼ばれるなんて、やっぱ噂は……」

 廊下を歩き、理事長室を目指す二人を遠巻きに見遣り、同期達は口々に囁き合う。そんな彼らに視線を向ける和士は、この先にある展開に思いを馳せた。

(例の噂――最新鋭機のテストパイロットの件が本当ならば、呼ばれるのは凪一人のはず。俺が呼ばれる理由はなんだ……?)

 その答えを求め、無機質な威圧感を与える扉を開いた彼らの眼前に――整然とした空間に佇む、一人の男が現れる。

「――来たか」

 ヒルフェン・アカデミー理事長にして、久水財閥会長――久水茂。その強面を前に、和士は緊張した面持ちになる。凪は、相変わらずきょとんとした表情だが。

「え、Aクラス候補生、伊葉和士ッ!」
「同じくAクラス候補生、海原凪だべ。あ、いや、海原凪です」

 過度に緊張している和士と、緊張が無さ過ぎる凪は、それぞれ全く違う声色で挨拶をする。そんな二人を交互に見遣るスキンヘッドの巨漢は、不敵な笑みを浮かべて
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