第3話 入学の時
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「んあ! こないだの兄ちゃんじゃねぇだか!」
曲がり角から現れた、一人の少年。その間の抜けた声を聞いた途端――和士の表情は、空よりも曇る。
「お前……」
「いやぁ、こったらとこで会えるなんてついてるべ! 東京って、広いようで狭いんだなぁ」
「……また迷ったのか」
「うへへ、面目ねぇべ。あ、そうそう! これ、村のお土産だべ!」
「いらんわ!」
顔を合わせるなり、馴れ馴れしく話しかけてくる首席、海原凪。和士と同じ制服に身を包んだその姿は、元々持ち合わせている長身やスタイルの良さもあいまって、整然とした美男子という印象を与えている――が、垢抜けない言葉遣いは相変わらずであった。
さらに、その背には薪で作られた木箱を背負っている。箱の中では、文字通り捕れたての魚達が、ピチピチとのたうちまわっていた。
(まさかこいつと出くわすなんて……! 最悪だ!)
まさしく変人。一期生の恥。二度目の出会いを経て、和士はさらにその認識を強めてしまう。
「な、な! そういや、まだ名前聞いてなかっただな。兄ちゃん、何て言うべ?」
「お前みたいなカッペに名乗る名前なんてない! ついてくんな、俺が恥かくだろうが!」
「そ、そんなぁ。おら、ここまで来てアカデミーさ行けなかったら、村のみんなに合わせる顔がねぇべ! おねげぇだ、助けてくんろ〜!」
「だああああ! わかった! わかったよ! 連れてきゃいいんだろ! 抱きつくな顔を擦るな鼻水付けるなぁぁぁァァ!」
足に縋りつき、涙目になりながら道案内を懇願する――ヒルフェン・アカデミーの首席。そんな新世代ヒーローとしてのあるまじき姿に、和士は泣きそうな表情で悲鳴を上げていた。
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