第2話 ヒルフェン・アカデミー主席、海原凪
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「いんや、こんだけ助けてもらって、お礼もしないまま別れるわけにはいかねぇだ。入学式には漁れたてで新鮮な魚、持ってきてやるべ! だから、名前教えてくんろ!」
「いらねぇよ、そんなもん!」
これ以上、付き合ってはいられない。あまり長いこと一緒にいると、自分まで同類と思われる。そう危惧した和士は、馴れ馴れしく話しかけてくる彼から逃げるように、早足で歩き出す。
その時。
「あ! いたいた! もう、何してるんですか海原凪さん! いつまで経っても資料を取りに来られないですし……」
(……なに? 海原凪!?)
入り口から駆け寄ってきた、若い女性職員――和士に合格資料を渡していた職員が、慌ただしい様子で少年に話しかけてきた。
さらに。その口から出てきた名前に――和士の表情が驚愕の色に染まる。
「あ、職員の人だでな? いんやぁ、申し訳ねぇべ。おらぁ、事務室がここにあるたぁ知らねぇで、あちこちウロウロしてたんだべ。こっちの親切な兄ちゃんが案内してくんなかったら、今も迷子だっただな」
「はぁ……。もういいですから、早く資料を取りに来てくださいね。入学手続きも、あの資料を使うんですから」
「今度から気をつけるべ。あんがとな、姉ちゃん」
そして――少年と、職員のやり取りを聞き。彼は、真実を知ってしまうのだった。
「お、お前、が……? お前が、一期生の首席合格者、の……?」
「んだ。おらぁ、海原凪ってもんだべ。いやぁ、一番だなんて嬉しいべ」
だらしなく頬を緩め、にへらと笑う田舎者。そんな首席合格者の姿を目撃した和士は――崩れ落ちるように膝をつく。
そして――虚ろな瞳に青空を映し、乾いた笑い声を上げるのだった。
「は、は、はは……こいつが? このカッペが、俺達の中で誰よりも優れた……首席? このカッペが……最新鋭機のテストパイロット? はは、ははは……」
「ど、どしたんだべ? どっか、痛むだか?」
――これが、共に数多の命を救う相棒との出会いであることなど、知る由もなく。
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