第2話 ヒルフェン・アカデミー主席、海原凪
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の資格など、望むことすら許されないだろうに。自分の力量を勘違いしてる蛙共には、ほとほと呆れたものだ)
尊大ながらも、そうなるに値する実力を持つ彼には――ある一つの確信があった。それは、自分が今期の首席合格者であるということ。
そして――首席合格者にのみテストを任される、と噂されている最新型着鎧甲冑に触れられる人間であるということだ。
――しかし。
「でも、すげぇよな。あんな超人でも次席なんだぜ」
「ああ。俺、よく入学できたなぁ……ま、補欠合格だけどさ」
「……なに?」
和士の耳に、聞き捨てならない情報が入り込んできた。その話をしていた同期達に、彼は眉を吊り上げて迫る。
「そこのお前達。妬ましいのかどうか知らないが、よくそんなふざけた冗談を抜かせたな。この俺が、次席だと?」
「え、ええ? 伊葉、お前掲示板見てないの……?」
「俺達、掲示板見たけど……お前、次席になってたぜ?」
「掲示板だと……!?」
返ってきた言葉に、和士は信じられない、という表情になり――みるみるうちに、険しい顔色になっていく。気がつけば、彼は弾かれたように走り出していた。
首席合格していて当然だと、見向きもしなかった掲示板を見るために。
(バカな……そんな、バカな……! 首席は俺だ! 俺でなければならないのに……!)
校舎を飛び出し、人混みを掻き分け――巨大な掲示板を見上げた彼の目には。
次席、と書かれた自分の名前が映されていた。
(バカ、な……)
信じ難い光景に、目眩を起こし――ふらつきながらも、和士は辛うじて正気を保つ。まだ、明らかになっていないからだ。
この自分を差し置いて、首席の座を勝ち取った者の名を。
和士はその名を知るべく、視線を自分の名の上へと向ける。あるはずのない、自分以上の順位――首席の場所には、見覚えのない名前が書かれていた。
(海原凪……? なんだ、こいつは……?)
和士以外にも、名の知れた首席候補者は何人もいる。そういう少年少女達は皆、特殊部隊の訓練を受けていたり、若くして有名大学を卒業していたりするようなエリートばかりであるが――彼らは全員、和士より下の順位であった。
そう、自分だけではない。以前から首席候補者と噂されていた猛者達を何人も出し抜き、この海原凪という無名の男は首席の座を掴んだというのだ。
(この男は、一体……?)
その実態を思案し、和士は眉を顰める。――その時だった。
「あのぉ。合格資料が貰える事務室って、どこですかぁ?」
背後から、間の抜けた少年の声が聞こえてきたのは。
振り返ってみれば――その声の主が、あの田舎者の少年だったことがわかる。
「なんだ……お前」
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