第2話 ヒルフェン・アカデミー主席、海原凪
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者を拒むその扉は、当然のことのように少年を招き入れた。少年の方もまた、当然のことのように校舎内へと踏み入れて行く。
彼は、掲示板を見る前から確信していたのた。自分は、この難関をくぐり抜けた合格者なのだと。
(全く……ああいう思い上がったバカが集まると、レスキューヒーローの価値が下がっちまう。入学式を終えたら、もっと試験を厳しくしてもらうよう具申するかな)
軽蔑の眼差しで、合否に一喜一憂する同期達を一瞥する少年は――冷酷な面持ちのまま、エレベーターで資料を受け取る会場へと登って行く。
彼を乗せているエレベーターは、ガラス張りにされたその構造により、学舎の景観や東京湾、その向こうにある首都のビル群まで一望できる。その絶景を見遣る彼は、ふと視線を落とし――受験者の群れの中にいる、一人の同期に注目した。
(……ん? な、なんだあいつ……)
うなじが隠れるほどの黒の長髪に、小麦色に焼けた肌。少年より頭一つ分ほど高い長身に、整った目鼻立ち。口元から微かに覗いた八重歯。
そこだけ見れば、「ちょっと髪が長いスポーツ系のイケメン」で終わる存在だが……その同期は、周りの受験者から激しく浮き出るほどの異彩を放っていた。
藍色の擦り切れた着物に、麦わら帽子。ボロボロに使い古された草履。そんな、遥か昔の村人のような格好だったのだから。
(見るからに凄まじい田舎者だが……よくあんなのが受験しに来たものだな。門前払いにならなかったのが不思議なレベルだ)
その異様な容姿の同期は、受験カードらしきものを手に、人混みの中で右往左往している。見るからに、道に迷っているようだった。
(落ちたとわかって帰ろうとしたら、帰り道がわからない――ってとこか? やれやれ、あんなのが栄えある一期生になろうとしてた、なんて世間に知れたらロクなことにならないな)
そんな彼を見下ろす少年は、呆れ果てたようにため息をつくと、踵を返してエレベーターから出て行く。もう、二度と見かけることもないだろう、と思いながら。
――その後。
「これで入学手続きは完了です。では、こちらの資料をどうぞ」
「ああ」
合格者が向かう事務室に招かれた少年は、整然としたオフィスで目的の資料を手に取ると――感慨に浸る間もなく、その場を立ち去って行く。喜びに打ち震えていた周りの合格者達は、そんな彼の姿に注目していた。
「見ろよ、あいつ……! 伊葉和士だぜ!」
「うそっ……! あの、オックスフォード大学を飛び級で卒業したっていう天才児……!?」
少年――伊葉和士は、自分の噂話をヒソヒソと囁き合う、有象無象の少年少女を一瞥する。取るに足らない存在を見るような眼で。
(ふん……俺ほどの人間でなくば、そもそも着鎧甲冑
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