番外編 赤星小梅
[1/3]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
私、赤星小梅が戦車道を辞めた。理由は世間で知れ渡った第六十二回戦車道全国高校生大会がきっかけただ。あの大会から10年の歳月が立った現在。あの悲劇よりもう戦車に乗らないと決めたのにこうして戦車に乗っているという事は私は結局のところ戦車道に対してある程度のけじめがつけられたのだと思う。だけど10年前の私はとてもではないが自分から見ても情緒不安定だった。あの第六十二回戦車道全国高校生大会において中等部からの友達だった西住みほさんを目の前で亡くなった事から私の人生は絶望に変わった。
昔ほどではないが後悔の念が私の心に渦巻く。どうしてあのとき戦車が落ちなければ、あのとき流されたみほさんを助ければと、何度も思った。あの大会が終了後は私の他にみほさんに助けられた隊員達は副隊長であり黒森峰の太陽とも言うべきみほさんが自分の命と引き換えに助けたという事実が心を苦しめた。その時でさえ心が苦しくて逃げ出したかったのに、OG達の心もとない言葉でみほさんを罵倒した出来事はとてもではないが我慢できなかった。そして10連覇を逃した大会とOG達との乱闘事件により黒森峰は変わった。
OG達の人の命を何とも思わない心と自分の身内が戦車道の試合の事故で亡くなったというのに何の反応も示さない西住流に対して黒森峰の隊員達はついに我慢の限界が来たのか黒森峰を見限って機甲科の隊員達は次々と黒森峰を去ってしまった。自分達の上に立つ人間が戦車道の勝利以外を邪道として身内すら勝利のための消耗品としか考えていないのだから去っていくのも当然だ。
あれから黒森峰の取り巻く環境は本当に変わった。主力メンバーの半分以上が実戦部隊と整備班が黒森峰を去り、そして後援会でもあるOG会とスポンサーの半分以上が去ってしまい戦車道の資金源が劇的に減ってかつての全盛期程に戦力を整える事が難しく黒森峰戦車道は壊滅的な打撃を受けた。これだけ被害を受けても戦車道を続けるのが難しいと言われても黒森峰の戦車道を維持できたのは黒森峰の隊長の西住流まほさんとみほさんが亡くなってまほさんより副隊長に任命されたエリカさんの奮闘によるものだった。
それでもみほさんが亡くなった当初はとてもではないがまほさんは見ていられなかった。最愛の妹を亡くして一番傷ついていたのに間を置かずして西住流の非常ともいえる対応にまほさんは乱れに乱れた。初めは自殺も考えてみほさんの後を追おうとも考えたらしいが母親である師範代と家の家政婦の菊代さんに止められたらしい。その事をまほさんは「あの母が泣きながら止めてくれた」と、話してくれた。自分以上に鉄仮面のように感情を出さない母が泣いていたのは、母も人間だなと思い出させてくれたと笑って話してくれたが笑いごとではないと思う。だからこそ、私は今目の前にいるまほさんに話が聞きたかった。あれだけの悲劇を受けながらどう
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ