第241話 一煉寺龍太の戦い
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。けど、それを理由に手加減してくれるような優しい奴ばかりじゃないだろう?」
「ハァ、ハッ……」
「だったら。腕一本でも勝てるくらい、体力を無駄に消耗しない戦い方を掴むしかないだろう。防戦一方を装って体力を削らせる、とかな」
腕力のみによらない、強かな戦法。その術中に嵌まった「鉄拳兵士」は、拳の狙いも正確さを欠きつつあった。
再び攻撃を再開しても、一発も当たることなく切り抜けられてしまう。のれんに腕押し、という言葉を体現したかのような体術だった。
「……あんたが単なる義理人情だけで戦ってるわけじゃないってのは、見てりゃわかる。他にもっと大きな、戦う理由があるんだろうな。あんたには」
「……!」
「だが、あくまで敵として俺の前に現れたからには――」
そして、疲弊により「鉄拳兵士」の構えが緩んだ瞬間。
その一瞬で決着を付けるべく、彼の懐に龍太の身体が飛び込んで来る。
「――俺の拳で、沈んでもらう」
「……ッ!」
その右手に宿る力。殺気。
そこから迸る猛々しい気配に反応し、「鉄拳兵士」の右ストレートが条件反射で打ち放たれた。
それをスウェーでかわす龍太。紙一重でかわしたその首を、再び右腕が絡め取る。
「甘いんだよ作戦がァァ!」
「がッ……!」
しかし、同じ手が通用するほど甘い相手ではなく――「鉄拳兵士」が一角の兜で頭突きするよりも早く、龍太のヘッドバットが「鉄拳兵士」の鼻頭に炸裂した。
そして、痛烈なカウンターを急所に受けた「鉄拳兵士」は大きく仰け反り――
「けど」
「……!」
「やっぱり強かったぜ、あんた」
――決定打のチャンスを、許してしまう。
渾身の力と体重を乗せた、右逆突き。
水月と呼ばれる人体の急所へ、抉るように突き刺さったその一撃は――耐える暇すら与えることなく、「鉄拳兵士」に膝をつかせるのだった。
「あ……が……!」
それから間も無く――うずくまるように、「鉄拳兵士」は地に倒れ伏した。
戦いは、ついに終わりを迎えたのだ。
「……ふう」
暫し残心を取り、彼の様子を見ていた龍太は、「鉄拳兵士」が完全に戦闘不能になったことを確認し――ジェナの方へ向き直る。
そこには、安堵の笑みを浮かべて戦友の帰還を喜ぶ、彼女の姿があった。
「……終わったね、イチレンジ先輩」
「……ああ。ジェナもよく頑張ったな。――大手柄だぜ、お前!」
「えへへ、これくらい当然よ当然。ダスカリアン王国が誇る保安官の一員なんだから!」
わしわし、とやや乱暴に頭を撫でる龍太。その勢いに頭を揺らされながら、ジェナは満面の笑みを浮かべている。
……しかしその笑顔には程なくして、陰りが差し込んでいた。
「――これで、先輩
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