第241話 一煉寺龍太の戦い
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る自分とは対照的に、静かに構えたまま微動だにしない紅の拳士。その一挙一動に注視しつつ、真壁――もとい「鉄拳兵士」は最後の一戦に臨もうとしていた。
恩人を殴り、恥知らずの裏切り者と成り果てた今でも――生き延びることに意味はあると信じている。それが出来るのは、死ぬ前に自分という人間の意味を知りたい、という欲求が成せる業なのだろう。
一方、龍太も「鉄拳兵士」の全身から迸る殺気を受け、彼がこの戦いに懸けた想いの強さを感じ取っていた。
(単なる義理でここまでの戦意は出せねぇ。こいつなりの、でっかい理由があるんだろうな)
詳しい理由など知らない。初対面の相手をどこまで理解できるかなんて、たかが知れている。
それでも、拳を合わせていれば伝わる物もある。どれほどこの戦いに真剣か。どれほどのものを、この戦いに懸けているのか。
その強さが、勝敗を分けることもある。物理によらない、精神の強さが。
「――ッ!」
そして――龍太が攻撃を誘うように、わざと構えを緩めた瞬間。
その一瞬のみで全てを終わらせようと、「鉄拳兵士」の拳が唸る。
「ほぁッ……!」
「シュオッ!」
素早い踏み込みからのストレートを唯一の腕で受け流し、龍太は流れるような手刀を「鉄拳兵士」の首筋に浴びせる。しかし効き目は浅く、すぐにもう片方の腕からフックが繰り出された。
それをくぐって回避した龍太は、流れるような動きで「鉄拳兵士」の背後へ回り、距離を取る。
一本しかない腕では、いくらスーツのスペック差があると言っても防ぎ切るには限界がある。手数が圧倒的に劣る龍太では、決定打になりうる攻撃を出すチャンスが掴めない。
そこに勝機を見出した「鉄拳兵士」は、激しいラッシュで龍太を襲う。
「シュ、シュシュッ! シュアッ!」
「トゥッ、トゥアァッ!」
「……す、すごい……」
瞬きする間もない時間の中で、絶え間無く続く攻防。その行く末を見守るジェナは、超人同士による異次元の戦いを見せつけられ、固唾を飲んでいた。
しかし――激戦が始まり、十数分が過ぎる頃。
(でもやっぱり……腕が一本しかないイチレンジ先輩の方が不利だ。さっきから防戦一方だし――あれ?)
彼女は戦いの中で起きて行く異変に、徐々に気づき始めていた。
「ハァ、ハァ……ハ、ハァッ……」
「……」
長く続いた打ち合いが止まり、再び睨み合いになった時。その異変の実態が、明らかとなる。
お互い激しく戦い続けていたというのに、龍太の方はまるで息を切らしていないのだ。対して、「鉄拳兵士」は目に見えて疲労が色濃くなっている。
あれほど激しかった攻勢も、少しずつではあるが――勢いを失い始めていたのだ。
「俺は確かに腕が一本しかない
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